平凡だったはずの私が…

音海もか

第1話 平凡

空を見上げる。

真っ青な空。雲は1つも見えない。快晴、わたしはこの空が好きだ。


「ももなー、おっはよー!」

そう声をかけてきたのは同じクラスの須藤あかり。中学生から奇跡的に4年間も同じクラスだ。

「あかり、おはよ!今日ってなにか提出物あったけ?」

あかりはとてもしっかり者。だからわたしは毎朝こう聞く。

「えっ?今日、漢字テストあるよー」

ギクッ。忘れてた…

「その顔。もしや、ももな漢字テストあるのわすれてたでしょ。」

「わすれてましたー。あかり様範囲を教えてください!」

「仕方ないなー。ももなったら。154ページから170ページだよ。」

えっ!?多くない?

でも、忘れていたならしょうがない頑張らないと。せめて0点は回避しないとね。


あかりのおかげでなんとか0点は回避。10点中8点取ることができた。

「ほんとあかりには感謝。神様仏様あかり様だよ。あかりには頭が上がらない。」

「次は物理じゃん!移動しないと。遅れると山田怒るじゃん。急ご!」

そして2人笑いながら廊下を駆ける。


こんなどこにでもあるような日常がわたしは好きだ。どこにでもあるようでどこにでもないわたしたちだけのこの時間。わたしたちしか感じられない青春。今しか感じられないからこそ大切にしたい。この思いをそっと心の中にしまっておこう。


キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン


やっと学校が終わった。今日も1日長かったな。よく頑張った!そう自分を褒めてみる。これはわたしのルーティンだ。自分で自分を褒めることで前を向け新たな自分ができていくと思う。

「ももな。おつかれー!今日部活ある?」

「あかり、おつかれ。今日はオフだよ。」

わたし、佐藤桃菜はバレー部でセッターをしている。毎週火曜日はこうやってオフなのだ。

「今日、私部活だ!ごめんね、ももな先帰っといて。」

「はーい」

あかりはバスケ部。高身長を生かして1年生にして大活躍だ。試合でみせるあかりの真剣な顔は普段はみせない本番の顔だ。その顔がなんともかっこいい。そしてふだんのかわいさとのギャップが最高。


今日起きたことを思い出す。漢字テストがあったり、授業中当てられたりしたな。お弁当はいつも通り美味しかったし。休み時間いっぱいあかりと話せた。

そうこうしながら家路につく。空にはいつもと変わらない雲が浮かんでいる。何も知らず気楽そうにふわふわ浮かんでる。


そしてももなは家のドアノブに手をかける。

この先ももなは平凡な日常が変わることも知らずに。

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