第2話 雨

僕、赤兎あかど りょう夜凪やなぎ 杏子きょうこの出会いは3ヶ月前


その日は大雨

下校中だった僕は

びしょ濡れのまま道に倒れている

彼女を見つけた


「あ、あの!大丈夫ですか!?」

僕はとっさに声をかけた


「はぁはぁ…」

彼女はとても苦しそうに

その鼓動は今にも

雨に潰されてしまいそうだった


(どうしよう、どこか具合でも悪いのかな)


「……を…」

彼女の声は雨に打たれて聞こえない


「え?あの…あ!ウチ近いので!少し歩けそうですか?」




「…キス…して、くれませんか?」




理解力のある僕は、すぐに彼女の要望を理解できた


「え、あ、そっか、わかりました!キスですね!えっと、キスをするのには場所を………」

「って…………何言ってんですか!!」




「早く…お願い…欲しいの…」



理解力のある僕は、すぐに彼女の要望を理解できた





『あなたが…欲しいの…』





僕の心臓がドクンっと大きく鼓動する




その声に従うように

僕は倒れている彼女の唇に触れた



「ズキュウぅぅ」



!!!!

何か、何かを吸われている、僕の中の、何かを

でも、離したくない



キスをしたまま、僕達は立ち上がり

彼女は僕を喰らい続けた



雨の中

薄く

かすかに見える

先生の影が

人の形をしていなかったのを

今でも覚えている



彼女の髪は美しく踊り

その数秒間

世界の時は止まっていた



雨粒は目に止まり

僕の傘は宙に舞う



静止する時の中

僕は先生の体を強く

抱きしめる



彼女が満足するまで…

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