第24話 三人でお出かけ
二月十日、東京都では私立高校の入試日。
ということは受験休みと連休が重なるので私立に通う高校生は出かけたりする。
わたしも例外じゃなくて
服装はベージュのニットに黒い長めの細かいプリーツスカート、歩きやすいヒールの無いショートブーツを合わせて紺色のコートを合わせている。
かなり地味に見えるかもしれないけど動きやすいのにしてみたんだ。
計画のズボンじゃなくても良かったみたいだ。
髪はハーフアップにしてメイクもメイクをして大人に見えるようにしてみたんだ。
花音ちゃんたちは電車に乗って行くみたいで、少し時間がかかるみたいだった。
『もうすぐだからね』
「わかった」
わたしはそれを聞いてからすぐに楽しそうにしているかもしれないと考えている。
ワクワクして待っていると、新しいことをしているのが見えたんだ。
「ちょっと、君。一人?」
「え、いえ……人を待っているので」
「いいじゃん。どうせドタキャンされてるって」
大学生くらいの人でかなり強引な誘い方をするなって思ってしまう。
「もうすぐ来るので」
「こっちにこいよ」
わたしは手首をつかまれて連れていかれようとしたときだった。
後ろから走ってくる音が聞こえてきて、それがだんだんと近づいてきているのがわかる。
「ちょっと、君」
「なんだよ、って……」
「俺の彼女に何をしてるの?」
「え、その」
「それを言えなければ、手を離してくれるかな?」
後ろを向くと奏さんが話しているのが見えたんだよね。
そう言うとわたしの手首につかんでいた手を離して、彼は舌打ちをしてすぐに歩きだしてしまったんだ。
それを見届けると奏さんにギュッと抱きしめられてしまったんだ。
「大丈夫だった? 何もされてない?」
「うん、大丈夫だよ」
そう言うと大きく深呼吸をしている奏さんの方を向いたときに後ろから花音ちゃんが笑っている。
「花音が目ざとく見つけてね」
「うん。そうだよ、カナくんに
花音ちゃんはモコモコのジャンパーにパーカーとジーンズを履いている。
「花音ちゃん、久しぶりだね。元気にしてた?」
「うん! 今日は楽しみ、本屋さん」
わたしは花音ちゃんと絵本を見たりしてお昼までは神保町で過ごして、電車に乗ってすみだ水族館へと行く。
低学年から中学年向けの小説を買ったりしてお昼はあのナポリタンのお店ではなくて、サイゼリヤに行って好きなものを食べることにしたんだよね。
「あ、そうだ! 美琴ちゃんも一緒に席待ちで書いちゃった!」
花音ちゃんを挟んで奏さんと座っていたから兄妹みたいに見えたかもしれない。
「三名様でお待ちの白濱様~、どうぞ」
わたしはそれを聞いて立ち上がると一緒に案内された四人掛けの席に座る。
「メニュー見せて!」
「わかったから花音、少し待ってて」
そう言いながら奏さんが花音ちゃんにメニューを見せている。
「カナくん。シーフードパスタにする! あとドリンクバーつけてほしい」
「姉貴からお小遣いもらってきた? それならいいけど」
「うん。美琴ちゃんは?」
「あ、グラタンで」
「そうか。俺は適当に……あ、伝票に書くからメニューの番号を教えて」
そう言いながらご飯を注文してから、それを食べてすみだ水族館へと行くことにした。
「かわいい」
花音ちゃんはチンアナゴが好きみたいで小さなぬいぐるみのキーホルダーをつけているのがわかる。
先に花音ちゃんが順路を走っていったので、わたしと奏さんゆっくりと歩いて行くことにした。
家族連れとカップルが多いみたいで、祝日だから仕方ないかもしれないんだ。
「ここは来たことがあるの?」
「うん、中学生のときに校外学習で」
「そうなんだ。俺は初めてだから」
そう言いながら奏さんが手を繋いで一緒に回ることにしたんだ。
入口から結構見る物が多くて時間を忘れてしまうことが多い。
そのなかでペンギンの展示を見たりして、少し時間が経ってしまってから花音ちゃんのことを思い出した。
「あれ、花音ちゃんってどこに?」
「チンアナゴのところじゃない?」
そうしてサンゴの水槽と一緒に展示されているので、そこを観に行くことにしたんだ。
チンアナゴの展示は一つフロアが下の場所にあって順路に沿って歩いて行くと、きれいな金魚の水槽とかを通って見ていたときだった。
「あれ……花音がいない」
「え、花音ちゃんが見当たらないの?」
「うん、そうなんだよね」
お目当ての場所に花音ちゃんはいなくて、奏さんは少しだけ焦っているのがわかる。
少しだけここにとどまっても花音ちゃんらしき子は見当たらないんだ。
「美琴、どうしよ……迷子になっているかもしれない」
そう言いながら一度水族館を出ようとしている奏さんを見て、思わず繋いでいた手を引いて少しだけ話をする。
「花音ちゃんってキッズケータイとかって、持ってないの? 音羽さんが働いてるなら」
「キッズケータイか……確か姉貴に頼まれて、電話番号を登録したんだよ。かけてみる」
そう言いながら花音ちゃんの電話番号を掛けているので、繋がれば良いと考えているときだったんだ。
「繋がった、もしもし? 花音か?」
奏さんは建物の外に出てからすぐに花音ちゃんの居場所を聞いてそこへと向かうことにした。
そのなかで花音ちゃんがいたのはソラマチにある総合案内所で待っていたんだ。
もうかなり泣いていたのか目元が赤くなっているのが見えている。
「あ、保護者の方ですね」
「はい。ご迷惑をおかけしました」
「三十分ほど前にこちらに来て」
「マジか」
ちょうどそれが花音ちゃんを見た最後だったんだ。
「花音、心配したんだ。良かった……」
「ごめんなさい。カナくん、美琴ちゃん」
「無事で良かったよ」
そのまま奏さんが花音ちゃんを背負ってソラマチでお土産を買ってから、すぐに横浜へと向かうことにしたんだよね。
わたしもお土産を持って時間があるので行くことにしたんだ。
午後四時過ぎになって電車に揺られて横浜へと向かうと駅で
「あれ? 美琴ちゃんも来ちゃったのね」
「花音が途中で迷子になったけど、叱らないでくれ。かなり反省してるから」
「うん。美琴ちゃんもありがとうね」
「良いんです」
奏さんと一緒に去年乗った観覧車に乗ることにした。
観覧車はとてもきれいで去年よりは少し時間帯は早いけど一年が経つんだなと思う。
「久しぶりだな。こうして乗るのも」
「うん。去年、つきあい始めたからね」
「あっという間だな。一年」
奏さんが手を握ってくれて、すごい嬉しそうに笑っている。
本当に一年が経つなんて思えない。
「これからもそばにいて」
奏さんからの言葉はとてもうれしくて、わたしは奏さんを見つめた。
「はい」
そう言ってからは嬉しそうに話してから、音羽さんから借りた車に乗って送ってもらった。
「ごめんな。予定外の横浜まで来てもらって」
「良いの。あ、夜景がきれいだね」
横浜の夜景がきれいになってきた頃で、そのまま町田を通って向かう。
「東原駅で良いかな?」
「うん。そっちで良いよ」
わたしはそのなかで大学のことを話した。
家には午後八時過ぎは普通に駅までやってきた。
「ありがとう。奏さん」
「うん。今度は三月だね」
「そうだね」
「また」
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