第4章 受験
第17話 過去との決別
十月の終わり、ハロウィンで世間は浮かれていたときだった。
わたしはそれどころではなかったし、別の問題で頭を悩ませていた。
それは面接のときにガチガチに緊張して言葉が出てくることがなくて、すごい話していることが多かったの。
「面接で緊張しちゃって、少しだけ怖いんだよね」
もとから大勢の人の前に立って話をすることがかなり苦手だ。
ダンスだったらそんなことよりも楽しいから、踊れるんだけど……別物って言う感じがする。
高校の面接でもガチガチに緊張してしまって、支離滅裂な言葉しか出てこなかった。
「大丈夫だよ。
「それとは別だよ。あ、そろそろ時間だ! 行ってきます」
「家に帰るよ」
わたしはすぐにテレビを見ている暇じゃないと思いながら、支度をして家を出ることにしたんだ。
駅までは歩いて十五分くらい、走ると三分の二くらいに短縮されるはずなのでローファーであることを覚悟して走っていく。
「急がないと、次の便に乗らないと間に合わない」
走ってすぐに改札を抜けるとホームに上がって列車に乗って行く。
息が上がるなかでスマホを見ると、LINEのメッセージが何件か来ている。
「
『受験の日っていつ?』
『十一月二十一日だよ。どうしたの?』
『その日の朝に会えるか?』
それからOKというスタンプを送ってからはすぐに学校の最寄り駅に着いていく。
受験まで残り二週間だと考えているからか、とても怖いと考えているのが大きい。
教室に向かうと
「美琴、今度の映画見に行かない?」
「行きたい! 駅の近所にあるから、そこで見ようよ」
教室では受験を終えた人が半分になってきている。
もともとこの学校は大学よりも専門学校に進学する子の方が多いので、そうなるのは仕方がないと思っているところだ。
その次に多いのが大学を推薦や総合型選抜で受験する人、看護学校を受験する人と分かれる。
特進コースと総合クラスで大学の一般入試をするのがごく一部になるのが当たり前な感じだ。
「美琴はさ、彼氏とはどんな感じなの?」
「え、うちは……まだ現状維持だけど」
「マジで? 意外としっかりしてるね~」
「卒業までは友だちと楽しく過ごしてほしいって」
「そっか~、優しい人じゃない?」
「そう言う日菜はどうなのさ。
「……それは超える一歩手前で、向こうが辞めた」
「はぁ⁉ そうなるか」
それを聞いて少しだけびっくりしてしまったけど、和真兄ちゃんの性格を考えるとそうなるかもしれないと感じた。
「でも、卒業までは待っているじゃない? それか受験が終わってから」
「そうかもね。大人だけど、高校生って話がきついよね」
今月、わたしは成人年齢の十八歳になる。
喫煙と飲酒、ギャンブル以外は完全に大人として扱われるし、契約もちゃんと一人でしないといけない。
早く卒業したい、その気持ちがだんだんと強くなっているような気がする。
だんだんと距離が開いてしまうのがとても怖い。
「受験が終わったら、どこか行かない? 二人で」
「良いね!」
受験の合格発表の後、わたしは日菜と横浜にあるクリスマスマーケットに行くことにした。
「それじゃあ、受験まで頑張ろう!」
「うん」
そのときに
その隣には騎士みたいに
何とも言えない雰囲気で話しかけにくいと思っていた。
そのときに授業が始まるチャイムが聞こえて席に着いた。
今日の授業は現代文は小論文で少し書くのが苦手なことがある。
頭の中では好きな曲が脳内再生されて、それどころではないと考えているくらいだ。
「
「少しは書けているんですけど……自信がなくて」
小論文は父さんにも教わっても無理だった。苦手意識が抜けきることができないと感じている。
父さんみたいに文才は無いと感じているけど、何となく文章を組み立てることは得意だ。
「いい感じね。このままでいいわ」
「はい」
「自信を持っていいからね」
「わかりました」
今日は選択科目の授業で先生が休みで、自習があったのでみんなが各々勉強をしている。
まあ、途中からは課題をやりつくして人狼を始めることになったのに混ぜてもらったけど。
自習ときは日菜が寝ていることが多めだけど……今日は嬉々として人狼でゲームマスターをしているくらいだ。
「それでは、本日処刑されるのは……陣内さん」
「うそでしょ? マジで言ってる」
「うん、マジで」
授業が終わってからはすぐに家に帰っていくけど、一度公園で試験の模擬的な面接練習をしようと話した。
「一緒の学科に行けるの、うれしいな」
日菜がそう話すとすぐに将来のことを話してくれたんだ。
「最初はさ、被服とかを勉強してもいいんじゃないかって思ったけど……建築士になりたいなって思ってたんだ。小学生のときの話だけど」
「建築士か……良いね。ハウスメーカ―とかに就職」
初めてそれを聞いてびっくりしてしまった。
「そうなんだ。楽しみ」
「ありがとう」
それから志望動機とかを話してからすぐに家に帰る。
その改札を抜けようとしたときだった。
「美琴?」
その声に心臓がドキッと大きく鼓動が鳴って、わたしは思わず後ろに振り返った。
そこには
何となく心がざわざわと不穏な気持ちになってくるのを抑えたときだった。
「久しぶり、だね」
「ああ、どこかの帰り?」
「うん、高校から帰るところ。そっちは」
「俺は予備校、少しだけコンビニで夜食を買いに来た」
楓嶺館は大学受験は比較的一般受験が多い、偏差値もまあまあ高い進学コースにいる紘一は一般受験なのかもしれない。
「そうなんだ。がんばってね」
「うん。美琴」
紘一は見たことのない表情をしてこっちを見ている。
「あのさ、俺、やっぱり――」
「ごめん」
それをとっさに口にしたときに彼は驚いていたのが見えた。
「ごめん紘一。わたし、つきあってる人がいる」
「あのメガネの年上だろ? 俺よりもアイツの方が好きか」
「うん。ごめんね」
紘一はわたしの手をいきなり握ってすぐにまた言った。
「またつきあうことはできないのか」
「そうだよ。わたしは、あの人が好きなの」
それを言ったときに心臓が飛び跳ねてしまいそうだった。
それからの時間はとても長く感じて手が離れていくのが見えた。
「そうか……わかった」
すぐに彼はすぐに走って予備校の方に走っていく姿を見送った。
何となくそれが子どもっぽく見えてしまうのは気のせいかもしれない。
「帰ろう」
わたしはすぐイヤホンをして曲を流しているときに、いとこの
最寄り駅の改札を抜けてすぐにダッシュで家まで向かうことになっているんだ。
季節が変わっていくことが通学路でわかるんだ。
大きな公園にある木々もたくさん色づいていることが見えたりしているんだ。
だんだんと寒くなってきているし、日の短さも感じることが増えてきたと思う。
「あ、見えてきた」
わたしはすぐに家の階段を上って玄関のドアを開ける。
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