第3章 文化祭

第12話 文化祭準備

 夏休みの浮ついた空気もなくなって、学校は文化祭への準備一色になっている。

 残り一か月で文化祭が始まろうとしているところで、二週間後にある秋休みまでにある程度完成させておきたいところだと思う。


 水曜日の六時間目はだいたい文化祭準備に追われている。

 左右の隣にある教室からはガムテープや段ボールで作業する音が聞こえてくるのが見える。


 そのなかには毎年一、二年でクオリティの高いお化け屋敷をするクラスがあったりしているんだ。


「三年の短編映画、楽しみだな」

「あれね。すごい楽しみだよ」

「あれって、すごいクオリティだもんね」

「そうだね」


 情報系の選択科目をしている生徒は短編映画を撮ってすでに完成していると聞いているんだ。

 それをとある教室でずっと上映会をしていると教えてくれたの。

 日菜ひなの友だちに文芸部の子がいてその子が監督として短編映画を撮って、それに日菜や軽音楽部のメンバーも特別出演しているというんだよね。


 うちのクラスはダンスをメインにしていることもあって、衣装とか打ち合わせがメインになってきている。

 わたしのグループはダンススキルが高い子が多くて、衣装も私服の踊りやすいデザインで踊ることにしている。


「そういえば。文化祭に白濱しらはまさん来るんでしょ?」

「カメラマンだもんね……一緒に行きたかったなって」

「仕方ない。向こうは仕事で来てるから仕方ない」


 かなでさんの仕事は学校に来るカメラマンで、行事のたびに高校にやってくるんだ。


 日菜は部活の写真を撮ってもらったと話していたんだけど、しばらくベースの弾き方とか教えて帰っていったと聞いている。さすが軽音の経験者だと感じてしまう。


「あれ、最近って会ってるの?」

「ううん。一か月くらい前に会っただけ、あのときヤバかったんだから」

 日菜には話せることなのでオブラートにせずに小声で話すことにしたんだ。

「どうしたの?」

「え、率直に言うと……卒業まではしないって」

「ああ。そういう事ね」

「そうなんだよ」


 わたしはあのときのことは言わない方が良いなと感じがしたんだよね。

 まだ話すことができないけど……子どもの頃に難しいことをしているかもしれない。


 あの熱を帯びたキスを少しだけ思い出すと、すごいドキドキしてしまうことがある。

 あんなことをされたら、少しそう言う気にもなるよね。


「春休みにはきっと大丈夫だよ」

「うん」


 わたしはすぐに日菜と一緒に教室に戻ると、クラスのなかで練習を始めることにしたんだ。音源はCDから流してすぐに練習を始めることができるようにスペースを作って踊り始めたんだ。


「それじゃあ、かけるよ!」

「は~い」


 そのなかで自分は普通に振付を簡単に復習していくことが大半だった。

 J-POPやk-POP、ジャニーズなどの踊りたい曲で盛り上がってきたときに最高難易度の曲が流れてきて、自信のあるメンバーが出て踊り始めることになったんだ。


 わたしは踊るのがとても楽しくて笑顔でステップを踏んだり振付を使ったりしているんだ。


「それじゃあ、体育館に衣装を着ていくよ」

「は~い」


 教室のカーテンとドアを閉めてからクラスでみんな着替えて、体育館へと移動することになっていた。体育館でシューズを履いてからすぐに練習を始めることにしたんだ。


 わたしはシンプルな蛍光色のパーカーに黒いズボンを履いてキャップを被る。まるでダンス部にいた頃を彷彿とさせるような服装に少しドキドキしてしまう。


「それじゃあ、行こうか」


 衣装を着て本番と同じように通して練習するのは本番までに三回ある。

 体育館で練習するのは学活の時間ですぐにステージの照明を落として、最初に踊るグループがボカロの曲が流れて踊り始めたんだ。


 それは日菜の踊っているグループで中にはダンス部ではないんだけど、アクロバットが得意としている子がいて派手なバク転とかロンダートをしたりしているのが見える。

 衣装は蛍光色のパーカーにスキニージーンズを着ている。


「次、藤島ふじしまさんのチーム」

「はい!」


 元ダンス部の藤島さんたちのグループはBTSメドレーが流れてきて、ジャケット姿で踊りを始めている。


 踊り始めたのはゴリゴリのヒップホップですごい練習していたのかもしれない。

 一年生のときと同じようなキレのある動きをしていて懐かしい。

 ここから曲調が変わってジャズっぽいメロディーがおしゃれな曲が流れてくると宮野みやのさんと渡辺わたなべさんがペアで踊っている。


 宮野さんが紺色のズボンに金ボタンのついたダブルジャケットで、渡辺さんが白いシャツに紺色のフレアスカートを履いて踊っているのがとてもレトロなんだ。


 踊っている姿は女子二人ではなく男女に見えて、宮野さんがとても自然にエスコートしていることがすごいなと思ってしまうんだ。

 二人はジャズダンスを踊りながら楽しそうな笑みを浮かべて、ステージ上でお辞儀をしてチームが変わっていく。


 わたしはすぐにステージのスポットライトの方へと飛び込んでいった。

 あっという間に自分のチームも出番を終えると、体育館で撤収作業に入っていくのが見えたんだ。


瀬倉せくらさんの踊りがすごいよね。何かに取り憑かれているみたいだった」

「ありがとう。そんなに踊るのがすごいんだ」

「無自覚だね」

「それじゃあね! また練習をしよう」

「バイバイ」



 そのなかで下校準備をしてからすぐにバイト先へと行くことになった。

 急きょ来れない子がいて、その子の埋め合わせにシフトが余裕のある自分が手を上げてすぐに決まったんだ。


「あ、美琴みことちゃん!」

「ごめんね。急にシフト入ってもらって」

「良いんです。マスター、先に着替えてきます」


 すぐに着替えてから勤務表に時刻を書いてから、わたしはカウンターの方へと向かう。

 そこで接客と料理を作ることをしていくんだ。

 すっかりバイトの仕事も慣れてきて、父さんにコーヒーを淹れるのも上手くなった。


 そのときにたまに編集さんが来るときに出すときに任せられることが多い。

 バイト先は喫茶店、レコードで歌謡曲やクラシックが店内で流している。


「美琴ちゃん。お疲れ様」

「はい。またピンチヒッターに来ますね」

「助かったよぉ、ありがとうね」

「はい。お先に失礼します」

「またね」


 電車に乗って家の最寄り駅に行くと、大きな公園を通り過ぎるのは最近やめて迂回している。スズメバチが活発になってきたせいだ。

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