第8話 恋バナ
それからお昼ご飯を食べて、
部屋にはうちと奏さん、
そのときにゲームを片づけて
お母さんの音羽さんから聞かれてたときに衝撃的だったみたい。
わたしがどんな人なのかを見てみたかったようで、無理を言って会いたいと話したらしい。
「カナくんはさ、
「うん。でも、美琴とはまだ楽しく過ごしたいな」
「そうなんだ~。まだそんなに進んでないの?」
「え、まあ、ある程度のところまでは」
奏さんが照れたように笑いながら話すと、花音ちゃんは笑顔で「キャーッ」という声を上げて手を頬に当てているのが見えた。
年相応な反応だなという感じでほほえましい。
十歳下の子とかってかわいいなってことしか出てこない。
しかも、一人っ子だから年の離れた妹みたいな気持ちになって見てしまうことが多い。
「本当に⁉ すごいじゃん、マンガみたい」
「でも、これは内緒だよ」
「うん。そうだね」
「すごいよね。社会人と高校生の恋愛って、大変じゃない?」
「花音ちゃん、すごい聞くね」
「だって。恋バナは聞きたいじゃん?」
それから花音ちゃんと一緒にSwitchであつ森をしたり、マリカーをしたりし仲良くなってしまったんだ。
お互いに好きな本とかを勧めたり、花音ちゃんがダンスをしたいと話しているのを見て横浜のなかでいくつかダンススクールをサイトで見たりして見学へ行くことを勧めた。
ダンススクールにもジャンルと雰囲気が合わないと楽しくレッスンをすることができないから。
「あ、花音ちゃんの好きな子いるの?」
「いるけど、内緒‼ カナくんたちに言わないよ」
「そうか~、ばらしたくないもんね」
それからしばらくすると音羽さんが戻ってきて、花音ちゃんが部屋に案内してくれたの。
「カナくんは来ないでね! 美琴ちゃんとお話しするから」
それを言われて奏さんは思わずびっくりしたけど、笑顔で見送ってくれたんだよね。
部屋には制服とかがしまわれていたり、黒いランドセルと教科書とかが置かれてある机とかが置かれてあったんだ。
そのなかには父さんが書いている小説も本棚に置かれてあるのが見えた。
「あ、これ、見たことある」
「本当!
「うん、とても面白いんだ」
「そうなんだね。どの本が好き?」
花音ちゃんはほぼ即決で児童文庫の本を取り出してくれて、父さんが楽しく執筆しているシリーズだったんだよね。
「美琴ちゃんって。カナくんとどこで知り合ったの?」
「え、ああ、いとこのお兄ちゃんの中高でやってるバンドの後輩が奏さんで」
「そうなんだ。いとこのお兄ちゃんが紹介したの?」
「うん。一番気が合いそうって言われた」
「そうなんだ! そこが共通点なんだね」
その後に花音ちゃんはわたしに耳打ちをしていた。
「美琴ちゃんには言ってもいいかな? 好きな子」
「いいの?」
「うん。内緒にしてくれる?」
「する。約束する」
そのときに花音ちゃんと小指を絡めて約束をした。
「同じ学校の六年生の新島翔馬くんって子」
「年上⁉」
「うん。運動会の応援団長がとてもかっこよかったんだよ!」
それを聞いて思わず納得してしまったんだよね。
「確かにな~。応援団長の和装は憧れるよね」
「白組はね、女の子がすごくかっこよかったの」
「すごいね~。凛々しい女子って感じ?」
「うん」
そんなことを話していると窓の外は少しだけ日が傾いているように見えた。
「花音、美琴ちゃん、こっちでおやつ食べない?」
「は~い」
リビングに戻ると音羽さんと奏さんが話し合いながら大きめのロールケーキを切っていた。
「大きい! おいしそう」
「今日は人数が多いからね。少し大きくしてみたんだ」
「ママ、これ食べていいの!」
「良いのよ。今日だけだから」
「うれしい」
花音ちゃんは甘いものは好きみたいで、クリームがたっぷり塗られているロールケーキにキラキラとしたまなざしを向けていた。
「美琴ちゃんも食べて。今日は来てくれてありがとうね」
「はい、ありがとうございます。音羽さん」
「かわいい彼女ができて、カナ、良かったじゃない」
ロールケーキと紅茶を出してもらって、おいしいおやつを食べ始めたんだ。
「おいしい! ママ、どこで買ったの?」
「近所のケーキ屋さん。今日は売り切れてなくて良かったね」
花音ちゃんは上機嫌ですぐにマンションを出て友だちと遊びに行くと言って出かけてしまった。
「美琴ちゃんにかなり懐いたのね。初対面の人だと、ああならないのに」
「そうなんですか?」
「うん。人見知りがすごくてね。美琴が仲良くなるの、びっくりしたんだから」
花音ちゃんは学校だと大人しい子だと言われることがあるらしい。
そろそろ家に帰ろうとしているときに、花音ちゃんが帰ってきて寂しそうにしていたんだ。
まだ帰ってほしくないような感じがしている。
「まだいてもいいんだよ? ご飯も食べてもいいんだし」
「そんなことを言わないの! 花音、また来てくれるよ」
少しだけまだいてほしいなという顔をしているのが見えた。
わたしはそれを見て膝をついて花音ちゃんと同じ目線になった。
「また来るよ。これから受験とかもあるから、冬休みになってから遊びに行くよ」
「ほんとに?」
「うん。また奏さんからお母さんに連絡してもらうね」
それを言うと花音ちゃんは嬉しそうにうなずいて、すぐにハイタッチしてきてくれたんだ。
わたしは職場体験で保育園に行ったときみたいな感覚になって懐かしくなってきたんだ。
「美琴ちゃん、また来てね。今度は一緒に踊ろうね」
「うん。バイバイ、またね」
そして、音羽さんと花音ちゃんの家を後にした。
その帰り、わたしは奏さんと一緒に最寄駅から電車に乗っていくんだ。
父さんにはLINEで八時くらいには戻れるようにすると送っておいたんだ。
今日は母さんが親戚(母さんのいとこ)の葬儀のために単身で福岡に、父さんが家にいるのがわかっている。
「美琴。家に帰るまで送るよ」
「ありがとう」
「少しだけ心配だしね。この時間だと」
時刻は午後八時を回ろうとしているのが見える。
帰宅ラッシュのせいか、かなり混雑していて奏さんといるんだ。
「花音があんなに楽しそうなの、久しぶりに見たかもしれない」
「良かった。うちが歓迎されてるのかなって思ったけど」
「でも、とてもうれしいんだよ。ダンススクールとかもいろいろ見てたと思うけど、気が合うんだなと思ったよ」
それを聞いてホッとしたかもしれない。
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