第7話 姪っ子
ようやく八月を迎えてからも完全に暑さが厳しくなってきている。
もう東京でもかなり雨が降っていない日が続いていて、恵みの雨であってほしいなと思っているところだ。
すでに汗だくで前髪が顔に、シャツの背中の部分が肌に張り付いてしまうのが嫌になってくる。
「おはよう。
「大丈夫、今日は休みですし」
「
「そうなんだ。花音ちゃん、七歳だっけ?」
「そうだよ。今日は二人の家に行くよ」
七月に音羽さんには会っているけど、花音ちゃんに会うのは初めてだ。
二人が暮らしているのは横浜の中心部にあるマンションで、それも駅からも近いので相当いいところに暮らしているかもしれない。
そこで奏さんがオートロックの前で部屋番号をボタンで押して、すぐに音羽さんを呼んでいるみたいだった。
「あ、姉貴? 着いたよ」
『カナ、美琴ちゃんも久しぶりだね。入って』
オートロックが解除されて、すぐにエレベーターで十七階へと向かう。
「花音は最近ませてきて……どうしても恋バナがしたいんだって」
「そんな年頃だよ。わたしもそう言う時期があったしね」
「そうか~。花音は小学二年生なんだよ。しかも頭がいい」
わたしはとても楽しいことをしているみたいだった。
新しい場所なのか、若い家族がとても多いみたいだった。
十七階に着いてからエレベーターの前で待っていた女の子がいた。
色素が薄い子で奏さんによく似た子でこの子が花音ちゃんかもしれない。
栗色の髪をツインテールにして、とても明るくて活発な子だなと思った。
「カナくん! 久しぶりだね」
「おはよう。花音、今日は美琴を連れてきたよ」
「あ、初めまして。
わたしは花音ちゃんに自己紹介して案内してもらうことにしたんだ。
彼女はとても楽しそうにスキップで歩いて行くのが見える。
「美琴ちゃんはカナくんのカノジョ?」
「うん。そうだよ」
「そうなんだ~」
花音ちゃんは玄関へ向かうと、楽しそうにこっちを見ている。
「ママ~! カナくんと美琴ちゃん、連れてきたよ」
「あ、ありがとう。花音、楽しみにしてたもんね」
「お邪魔します。音羽さん」
音羽さんがキッチンから玄関へやって来た。
この前とは違う服装で、こっちの方が私服なのかもしれない。
でも、こっちの方がとても好きなのかもしれないと感じていたの。
「さ、上がって。みんなでご飯を先に食べようって話してたから」
奏さんと一緒に家に入ると、リビングのソファに花音ちゃんが案内してくれたんだ。
「美琴ちゃん、見て見て。わたしの小学校の服」
それは真っ白な半袖シャツに赤のタータンチェックのスカートを履いている。それは有名な私立小学校の制服を着ていたのにびっくりしてしまった。
「すごいおしゃれだね」
「でしょ? みなとみらい学園っていう学校、とても楽しいよ」
みなとみらい学園というのは小学校から高校まである一貫校で、たぶん学校ができて十五年も経っていない新しい学校だと思う。
でも、中学受験でここに通いたいと話していた子がいて、人気のある学校なんだ。
というか家から通うと普通に一時間以上がかかるのでうちは候補にすら上がらなかったんだよね。
花音ちゃんは褒められて嬉しそうにこちらに見ていたのが見えたんだ。
「すごいよな……姉貴、あそこって学費が結構高いはずなのに」
「ううん。うちはもともと外資系のとこにいたじゃん? あそこからさらに良い企業にヘッドハンティングされてね。いまは少し余裕を持って払えているんだ」
「そうなんだ。花音ちゃんは学校でどんなことをしているの?」
「えっとね。プログラミングとかー、英語とかかな? とても楽しいよ」
それを聞いて自分が経験した小学校生活と違うし、現代の小学生だなと実感した。
プログラミングとかも必修で行うこともあるって聞いていたけど、すごいなと思っているところだ。
「美琴ちゃんは何歳?」
「うち? 十七歳、高校三年生だよ」
「そうなの? カナくん、どういうと⁉ 高校生だよ」
「うん」
花音ちゃんは信じられない顔をしているけど、なぜか納得しているみたいだった。そのなかで楽しそうなことをしているのが見えているのが感じているかもしれない。
「あ、花音。制服汚さないうちに着替えて着なさい」
「わかった!」
花音ちゃんがすぐに制服を着替えに部屋に向かう。
音羽さんが先にリビングのテーブルに紅茶のティーポットとカップを置いて向かい側のソファに座った。
「ごめんね。花音はあまり年の差とか考えたことがないから」
「でも、最近の小学生もカレカノくらいはいますよね」
「そうなのよね~。花音の友だちでもいるね」
「時代が変わってきてるんだな……」
それを聞いてみんなで遠くを見つめるような表情をしていた。
うちが小学生の頃でも付き合っているという人は少なからずいたと思う。
でも、いま考えるとかわいいものだなと感じることが多い。
「だいたい漫画とかから影響受けるもんな」
「うちもそうでしたね。でも、最近は読んでませんもん」
「あ、そうなの? なんで」
「青年向けの方が好きで『ブルーピリオド』とか読みます?」
「そっちね! でも、あそこの雑誌って面白いの多いよね」
「そうだな。俺も昔姉貴から借りたことあるもんな」
漫画の話が多かったけれど、それから花音ちゃんがこっちにやって来た。
私服は白いオフショルダーで紺色のキュロットのようなズボンを履いているのが見えた。
そのまま花音ちゃんがSwitchのコントローラーを持ってきてくれて、そのままソフトを起動させてきているのが見えた。それはダンスでゲームをするみたいなものだったの。
「これするの?」
「うん! うちダンスめっちゃ好きなの。踊りたいな」
「良いよ、わたしも好きだから」
わたしはすぐにコントローラーを持ってゲームをスタートするようだった。
音楽が流れてから完全に初見で踊るのは久しぶりだったんだけど、次第に振付を体に覚えさせていくことができるんだ。
こんな感じで踊りながらコントローラーのボタンを押しながらゲームをするのは大変だなと思っていたのに全然苦じゃない。
「すごい。美琴ちゃん、めちゃくちゃ上手いね」
「うん。ダンスを習ってたって聞いたよ」
そのなかで後ろで奏さんが話しているのも気にせずに踊りに没頭させていく。
最後に完璧にそろったときがとてもうれしかった。
「終わった! めちゃくちゃ上手いね」
「ありがとう。花音ちゃん、上手かったよ」
「そんなことないよ」
初めてこのゲームをしたけれど、二度目にはかなりの点数が叩き出されてうれしかった。
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