第4話 合唱コン当日
七月の中旬、期末テストも終わってから合唱コンが行われた。
リハである朝の時間、各クラスでは最後の調整をしていた。
わたしはアルトの音を確認していってハミングで音を出していく。
「どうだろうね」
「うん」
白い半袖のセーラー服を合わせて着て、それからみんなで音を合わせていくことにしたの。
「それじゃあ、始めよう」
そのときにみんなが笑顔で話し合って聞こえてきていた。
インロトから最後まで通して、講堂に荷物を持って移動することにした。
講堂には高等部の生徒が集まって席を見ていくことにした。
最初は一年生の部がスタートするんだ。
「どんな感じかな」
「これから楽しみだね」
「うん」
一年生の合唱はどれも女子だけの合唱が有利になる曲が多めだった。
でも、上手いクラスは見かけたりしているのがわかった。
「上手くない?」
「うわ。同学年じゃなくて良かった」
その後に最後のクラスが合唱をするみたいで、すぐに準備が進んできている。
曲は『君とみた海』、うちのクラスでも候補曲に上がっていたものだ。
イントロの伴奏がとても難しいもので、伴奏者賞をもらうにはもってこいな選曲だったの。
歌い始めたときに講堂内がざわついたのがわかった。
ハーモニーが聞こえてくるのがすごいし、人数がうちの学年より五人くらい減っているのに奥の方まで聞こえてくるんだ。
「すごいハーモニー……ヤバいね」
「うん。これから聞けないのが悲しいな~」
クラスの合間に何かを聞いているのだけど、子どもの頃に楽しい声が聞こえてくる。
「ねえ、このクラスすごいよ」
「うん」
でも、その後のクラスはソプラノの人の声が大きいからか、あまり聞こえてこないのが残念だなと感じたりしていた。
二年生の部の半分を過ぎた頃、三年生の最初のクラスはホワイエで待機しているのが見えた。
わたしたちはホワイエのところで一度声出しをして舞台裏に行くことにしているので、二クラス前になったらすぐにホワイエへ移動することになっているんだ。
若干手が震えているのがわかるけど、みんな緊張しているのが目に見えている。
そのときに指揮者の
意外と宮野さんは緊張しいみたいだと思っているんだ。
幼稚園のときから知っている幼なじみのようで、とても信頼しているような感じ。
「大丈夫だよ。試験場じゃないんだから」
「あ~、緊張してきた」
「大丈夫だよ。のんちゃん、心配いらないよ」
「うん。
わたしは日菜と同じひな壇のところなのでアルトの一番後ろに並んだ。
「それじゃあ、舞台裏に行くよ」
「静かにね」
「はい」
その前のクラス……一組の合唱を始めようとしていた。
流れてきた伴奏を聞いてびっくりしてしまった。
「え、これは」
「マジか」
それは女声四部合唱の『大地讃頌』だったんだ。しかも、めちゃくちゃ良いハーモニーが行動に響いている。完成度の高さがすごいと思ってしまうんだ。
クラスのみんなの表情は見えないけれど、負けたくないって気持ちが雰囲気で感じているのがわかったんだ。
わたしはそのなかで音程を頭のなかで確認していくんだ。
最後のハーモニーが聞こえて講堂にそれが残響として残った余韻がとてもきれいだと感じたりしていたの。
「ヤバいよね……」
「うん。でも、負けられないね」
「そうだね」
「絶対に勝とう」
「そうだね」
四組の合唱を講堂に響かせることにしたんだ。
『続いて四組の合唱になります』
そのアナウンスが聞こえてきてみんなが舞台の方へ向かう。
照明がまぶしいけれどすぐに慣れてきて、舞台のひな壇に上ってすぐに心臓がドキドキしている。
わたしは客席の真ん中にある通路をずっと見つめている。
そこに先生が見ているのに気がついた。
それと舞台に近い客席の一番奥、控えめに立っている人がいた。
そのときに宮野さんと佐藤さんは深呼吸をして、客席の方を見てお辞儀をすると拍手が起きている。
宮野さんがわたしたちの方を向いて、伴奏の方に合図をして伴奏が始まった。
合唱の始まりはハミングで始まっていくと、全員ですぐに歌い始めていくのがわかった。
そのとき会場の空気が一気に変わって、ざわめきが小さく起きた気がしたんだ。
歌い出してすぐにパートごとに練習したようにきれいに分かれている。
大きく渦として響き渡っているけど、緊張なんてどこかに行ってしまったかもしれない。
そこからはもうみんなの歌声に伸びが出てきている。
一番のサビが聞こえたときに楽しいと感じた。
宮野さんの指揮もいつも通りになってきていた。
みんなが楽しく歌っているのがわかる。
そして、間奏の間は落ち着いて遠くを見つめていた。
また歌を歌い始めてからは二度目の歌詞を歌うことが起きている。
アルトのパートは控えめに出るところと出ないところだったけど、みんなが指揮と伴奏と一緒に歌を歌っているんだ。
さらにハーモニーが渦を巻くように講堂に聞こえてくると、二度目のサビが聞こえてきた。
ハーモニーがきれいに聞こえてくるのがとても楽しい。
最後のサビが始まる。
それは日菜の独壇場。
バチッと決めてほしい。
そう思ったときだった。
一度、ピアノと共にソロが始まるんだ。
講堂に響いたのは透き通ったソプラノだった。
それを聞いて最後に畳みかけていくようなハミングから全員で歌うユニゾン。
とてもきれいにパートごとに音程が合っているのかハーモニーが聞こえてくる。
伴奏のメロディーが終わったとき、会場から拍手が聞こえてきたのがわかった。
間違いなんて関係ない、楽しく合唱することができたと思っていた。
拍手が一番大きかったような気がした。
指揮と伴奏がお辞儀をしてすぐに舞台袖へと向かう。
次のクラスにプレッシャーをかけたかもしれない。
「やった! 良かったね」
「うん」
「日菜のソロ、マジで伸びてたよ」
「すごかったよ。鈴原さん」
「ありがとう」
みんなホッとしている表情でホワイエに一度待機することになる。
でも、やりきったと考えている。
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