第3話 新しい友だち

 家を出てから自分は動きやすい服装になる。

 わたしはダンスのレッスン着を着て、ワイヤレスイヤホンをしてからすぐに音楽をかけて踊り始めることにしたんだ。


 流れてきたのは『気分上々』、少し前に流行っていた曲だけど……アニメのエンディングに使われて再び流行っているかもしれない。

 スクラッチの音の後に流れてアップテンポな曲で踊り始める。


 最初に上下に体をアップダウンさせてからターンをして、さらにシャムロックという左右に振付を取り入れていく。

 歌詞を表現していくのがすごい楽しくなって、周りの目はあまり気にしない。


「めちゃくちゃ上手いじゃん。ダンス部を辞めるなんてもったいない」

「え、樹利じゅり伶菜えいな⁉ それに星宮ほしみやさんも」


 そこにいたのは中学の同級生の樹利と伶菜、それと星宮さんがこっちに来ているのが見えた。

 見られたと思ったけど久しぶりに会えたので話すことにしたの。


「久しぶりだね。ブランクすらないじゃん」

「そんなことを言われても、ダンス部は雰囲気で辞めちゃったから」

「結城ってそんな感じなんだね」

「うん」

「美琴、また来なよ。ダンススクール、ウィークリーの上級コースだったら行けるんじゃない?」

「あ~。まだ受験が終わらないとわかんないね」

「だよね」


 伶菜はダンススクールが同じの子で伶菜がバレエとストリートダンスのウィークリーコースに通っていた。

 わたしと樹利はウィークリーコースではなくて、週に数回希望するレッスンに出ることがあったんだけど……ほぼ毎日通っていたくらいだ。

 その頃はダンスをするのがとても楽しくて仕方がなくて、ダンスのコンテストにもワクワクとした表情で過ごしていた。


 一方の星宮さんは伶菜と同じようにウィークリーコースのバレエレッスンのみで、フィギュアスケートをがっつり練習している。最近はジャズダンスを習い出したとか聞いている。

 そのときの練習したときのジャズダンスを見たりしたときはとてもすごく上手いなと思ったりしているんだ。


 いつかはみんなで踊りたいなと思ってしまうくらいだった。

 ちなみに伶菜と星宮さんはフィギュアスケートでインターハイでワンツーフィニッシュした実力者にまでなっている。


「星宮さん、すごいよね。テレビで見たとき驚いたもん」

「ありがとう。今シーズンは大きな大会に出ようと思ってるから」

「すごいよね。伶菜、あの病気って治ったの?」

「あれ? ああ、あれはね。疲れたりすると出てくるかもしれない。生活リズムをしっかりとすれば大丈夫だよ」


 伶菜は中学生の時に一度病気で入院をしながら通学していたことがある。

 それは朝に体調が悪くなって起きれなくなるっていう話で、しんどそうだったときは何度か見たことがある。


 でも、症状は改善してきて今まで通りにフィギュアスケートもしたりすることができるようになっているんだ。

 伶菜が滑っている姿はとてもかっこよくて、氷上を笑顔で滑っているのが印象に残っている。

 今シーズンの目標はジュニアの全国大会へ出ることらしい。


「そうなんだ。体験スクールってのに来てね! 待ってるから」

「ありがとう! また行ってみようかな」

「そうしなよ。待ってるからさ、受験が終わってからでもいいしね」

「あ、そうだ。この子を紹介した買ったんだよね」

「え? 誰?」


 そして、樹利と伶菜が一人の女の子を紹介してくれて、隣にいた制服の子を紹介してくれたんだ。

 それは伶菜よりも小さい小柄な子で聖橋せいきょう学院高校の制服に星宮さんと同じようなスケートの道具を入れているバッグを背負っている。


 その子は何となく不思議な子で髪は編み込んだ三つ編み、だけどとても大人っぽい雰囲気をしている。

 初対面の高校生にあって驚いているのもあったりして、女の子は伶菜からの紹介から始まったんだ。


「この子は早場はやば文花あやかちゃん。フィギュアスケートのペアの日本代表選手だよ」


 わたしはそれを聞いてめちゃくちゃびっくりしてしまったんだよね。

 それにフィギュアスケートのペアってすごい技のイメージがあるし、最近は日本でも世界一に近い強さのチームもいるんだ。


「初めまして、早場文花です」

「あ、瀬倉せくら美琴です。よろしくね」

「よろしく」


 そのなかで文花ちゃんが星宮さんと同じマンションに暮らしていること、アメリカに生まれてから中学二年まで暮らしていたこと、ダンスやスポーツと体を動かすことが好きだってことを教えてくれたの。

 経歴的にもかなりすごくて、小さな頃からスケートをしているわけじゃないことが衝撃的だったんだ。


「でも、フィギュアスケートはいつから?」

「あ、それは日本に帰ってから。四年目」

「マジで⁉ 早い」

「うん。文花はめちゃくちゃ踊りも上手いの」

「そうなの。見せてほしい」

「これ、ガールズのレッスンがあった日のやつ。ダンスバトル形式になった日だ」

「何これ、ヤバすぎ」


 そのときにレッスンで撮影した映像を見ているのが見えたんだ。

 ストリートダンスでよく使われる洋楽に乗せて、激しく踊り始めている子がいたの。

 それが文花ちゃんで表現の仕方がとても他の子よりも違うと伝わる。


 体の使い方がとても上手くて、小柄なのに大きく見えるような振付をしたりすることができる。

 彼女の姿はいまの高校生のような姿ではなくて、まるでプロのダンサーみたいだったんだ。

 フィギュアスケートの試合の後にある上位入賞者が呼ばれるショーみたいなので、文花ちゃんたちはゴリゴリのヒップホップで踊ったりしているらしい。

 わたしはそれを見て背筋がゾワッとして、思わず拍手をしてしまったんだ。


「すごいね。めちゃくちゃ上手いし、バレエやってた?」

「よくわかったね」

「バレエを習ってそうな動きが多いし、体が柔らかそうな気がしたの」


 文花ちゃんはバレエとヒップホップを両方とも習っていたこともあって、相乗効果でとても上手くなっているなと思う。


「ありがとう。美琴ちゃん、良かったらLINE交換してくれない? みんなで踊りたいし」

「良いよ。聖橋学院の子は初めてだから、いろいろと聞かせてね」

「うん。よろしくね」

「こちらこそ」


 文花ちゃんとLINEを交換して、すぐにダンスの話について意気投合してしまった。

 新しい友だちができて、うれしかった。

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