第2話 合唱コン練習
授業は主に卓球で日菜がちょっと苦しみながら試合をしていた。
わたしはめちゃくちゃ楽しいんだけど、本人はあまり陸上以外のスポーツは得意ではないらしい。
今回の文化祭の出し物に関しても照明と音響係になっている。
「日菜~。得点係してくれない?」
「良いよ。すぐに行く」
わたしは日菜に得点係をお願いしてもらったの。
それからは授業が終わるまで試合をして、結局卓球部にいた子と決勝トーナメントをして負けたんだけど楽しかった。
その後に着替えていると、日菜が今度のオープンキャンパスに行こうか迷っているみたいだった。
「今度のオープンキャンパスさ、入試もあるんだって。総合選抜みたいなやつ」
「そうだよね。でも100分授業になるのはびっくりしたなあ」
「わかる。いままで90分だったしね」
わたしたちが志望している大学は来年度から授業時間が90分から100分に変更されるという。
それを聞いたいとこのはる
しかもパンフレットを見て、キャンパスの近所にあるマップとかは普通に写真を撮っていたし。
「そうなんだね。次ってさ、合唱コンの練習だよね」
「そうだ! 早く自由曲の練習がしたいんだよね」
三年生で最後の学校行事の一つである合唱コンは来月行われるんだ。
それまで練習をしていくことになるんだ。
合唱コンの練習が音楽室で行われていた。
ハーモニーが聞こえてくるのが心地いいんだ。
いま各パートで音程の確認をしている。
「最後の音程は少し上がる感じでね」
「みんな、ソプラノとメゾに釣られないでね」
「はい! わかった。これから楽しみだな」
「それじゃあ、各自列に並んで~」
「よし、こっちだね」
「みんな位置を覚えてる?」
「うん」
席が階段式の教室なので折りたたまれた椅子の前に立って、楽譜は机の上に置いて最後に確認していくことにしたの。
わたしのクラスでは自由曲に
この曲は中学生の時に歌ったことがあるので、音程には自信があった。
指揮者は
「それじゃあ、合わせよう」
「はい。お願いします」
それから宮野さんが伴奏の佐藤さんにアイコンタクトをして指揮が始まったの。
最初に流れてきたイントロに合わせるようにハミングをしていく。
歌い出しが重要な気がして、みんなが大きめの声で歌い始めた。
先生もリズムを体で取りながら見ている。
各パートで声量のバランスが絶妙なのできれいなハーモニーが聞こえてくる。それがとても楽しくて練習を頑張れたんだ。
わたしはそれを歌うのがとても楽しくて、アルトの音程もすぐに覚えた。
サビに向けて音のふくらみが大きくなって、サビではじける。
別れは出会いの始まり。
人生はそんな感じで過ごせているのかもしれないと考えているんだよね。
そんな意味が込められているのかもしれない。
このクラスでこうして合唱を歌うのはたぶんこれが最初で最後だ。
間奏になってから少しだけ緊張した表情をしているかもしれない。
間奏後の歌を歌い始めて、ラスサビの前にくる二度目のサビを歌う。
宮野さんの指揮はめちゃくちゃ正確で伴奏も安定している。
この曲は最後のサビでソロが一人で歌うんだ。
それは希望者が音楽の先生がオーディションをしてもらって、選ばれたんだけどとてもすごいんだよね。
担当になったのが
澄んだ歌声が聞こえてきて、ゾワッとしてしまう。
軽音ではコーラスが多いのに、こういったときは普通に上手いと思ってしまう。
最後まで気を抜かずに歌を終えて、音楽の先生は驚いてこっちを見ている。
「すごいわ。みんな、学年の最優秀と校長賞行けるんじゃない?」
「マジで?」
わたしたちは驚いていしまった。
三年生は毎年ハイレベルで去年は優秀賞が三クラス出ているくらいだ。
最優秀を取ることができれば最高な学校生活になりそうだ。
「あと、しいて言うならば……最後のソロを際立たせるために強弱を意識して。クレッシェンドがあると思うから」
「はい」
「あとは問題ないね。三年生はすごいぞって見せてあげて」
「はい!」
そして、音楽室を出て教室で練習をすることになった。
一度中庭を通って教室に戻るんだけど、それがとても暑いんだよね。
「あぢぃぃぃぃ~~~~、マジで」
結城女学院は夏服は初等部から高等部は共通して白いセーラー服に赤いラインが入っているんだ。
初等部から一本ずつ線が増えていくタイプなので、高等部のセーラーカラーには赤の三本線に赤いスカーフを結ぶ形になっているんだ。
今年から冬服だけセーラージャケットに変更されてから学校を希望する中学生が増えたらしい。
「そういえばさ。日菜、今日はバイト?」
「ううん。もともとシフトはない日だよ」
「それじゃあ、カラオケ行こう?」
「あ、ごめん。今日は父親が体調崩してて、家事とかを手伝わないと」
「そっか。仕方ないね」
父さんが原稿を編集さんに出してからときどき体調を崩して寝込むことがあるんだ。
それで今日から39.6℃と結構高い熱だったので、クリニックに行ってすぐに薬を飲んで寝ているはずだ。
「それじゃあ、また練習は来週ね」
「はい」
家に帰って父さんの部屋に行く。
「
「無理はしないでね」
「うん。練習してくるよ」
「おお」
そう言って家の近くで練習することにした。
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