第21話

思ったよりもしっかり寝てしまって、予定時間に遅れそうで慌てて支度をして、部屋を飛び出した。

なんとか思ってた電車の時間に間に合って、駅前のラヴェリテに入る。

すぐに、洋菓子屋さんの甘くて、でもほろ苦いような匂いに包まれた。

入り口近くでカゴを持って、5種類のクッキーを入れる。

私の好きなナッツとチョコのクッキーも。お母さんに頼まれたもの以外に、色とりどりのリボンがかけられたクッキーの包みの中から、緑のリボンに包まれたものも選んだ。

レジに並び、領収書、領収書と思い出す。

「お預かりいたします。」

可愛らしいお姉さんにカゴを差し出す。

「これは会計を分けてください。あと、こっちの分は、領収書をください。」

「かしこまりました。ラッピングなどはいかがされますか?」

「大丈夫です。」

少し俯きながら話すお姉さんの声が少し聞こえづらくて、ふっと息を吐いた。

ラヴァリテを出てすぐの歩道の花壇に寄って、ひとつだけ別にしてもらった、緑のリボンのクッキーは鞄にしまった。

お財布に領収書をしまおうとして、カバンに入ってたレシートに気づく。

靴下3足千円のレシート。

靴下は久しく買ってなくて、春馬くんのかなと思ってお財布にしまった。

そのときポケットのスマートフォンが震える。取り出すと、春馬くん名前が表示されていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る