第7話
池のある公園に戻り、ベンチに腰掛けた。
ニコニコしながら春馬くんがパンの入った袋を覗き込む。
「はい、奈央の。」
手のひらを向けるとそっと置かれたくるみパンがまだほんのり暖かくて、思わず私もニコニコしてしまった。
「いただきます」
「いただきます」
こういう挨拶に厳しいから、ちゃんと言わないと春馬くんは許してくれない。
そういうところ、いいパパになりそうだなぁとか。言うとぜったい喜ぶから言わないけど。
3口で、一つ目のクリームパンを食べ終えた春馬くんはまた袋を覗き込む。
分けようねって言ったサンドイッチを取り出したので思わず、
「私のも残してて。」
と、卑しくも言ってしまうと、わかってると、ニコニコしながら、2切れまとめて口に入れた。
そんなに細いわけじゃないけど、パッと見た感じ大食いには見えない。なのに、本当によく食べる。だから釘を刺しておかないと食べられてしまいそうで。
「ねぇ。」
「ん?大丈夫、大丈夫。」
これはいつもの大丈夫とは種類の違う大丈夫。まぁ、食べてもいいんだけどさ、でもさ。
私がきっと不満そうな顔をしているのに気がついて、サンドイッチのパックは2切れ残して閉じられた。2/3は食べられた。半分こじゃないんかい。くるみパンをようやく食べ終えたけど、なんとなくサンドイッチに手を出す気が削がれて、春馬くんので膝の上を経由して、反対側にある袋を引っ張ると、袋ごと私の方に渡してくれた。
私が覗き込むと横から春馬くんの手が入ってきて、ウインナーロールが出ていく。
私は、小さなパイの上にクリームチーズが乗ったひと口で食べられるパンを取り出した。
「それ、美味しそうだよね」
あげないよ?
普段は食べるのが遅いけど、パイを一口で頬張った。
「取らないよ。」
笑いながらそういう春馬くんの目線はもう次のパンに向いている。
「早すぎるから、食べるの。」
やっと咀嚼し終えて、私が言葉を発する頃には、チョコの練り込まれた縞々のパンに齧り付いていた。
残しててくれたサンドイッチは、バジル風味のポテトサラダと蒸し鶏のと、たまごサラダではなくてオムレツのよう卵が挟まっているのと2種類あって、すごく美味しかった。
「おいしかったね。」
「うん、また行こう。他のパンも食べてみたいし。」
「全部食べるの?」
「いや、苦手なのもあるから全部は無理だけどさまだ他にも食べたいのあった。」
「苦手ってかぼちゃのやつ?」
「うん、かぼちゃは野菜なのに甘過ぎてやだ。」
「美味しいのにね。」
「そんなにいうなら、奈央の方が好き嫌い多いじゃん」
私たちは、ベンチに座って、パンを食べて、笑いながら、どうでもいい話をし続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます