第4話
朝の散歩は好きじゃないと言いたいところだけど、こうやって歩き始めると案外悪くない。特にこの寒くも暑くもない季節は、散歩日和なんだと思う。
まぁまぁ大人な2人が手を繋いで、それぞれが好きな方を向いて、何を話すでもなく、歩く。ただ歩く。それだけの時間だけど、春馬くんとだからきっと心地いいんだろうなと思う。寒くなったら無理だけど。あと少し、この季節の、この温度感の間は付き合ってあげる。言わないけど、少しだけ握ってる手に力を込めた。
「なに?もう帰りたくなった?」
半笑いのお手本みたいな顔をしてそう言う春馬くんは、帰る気が全くないことはわかってる。
「違うよ、散歩、楽しいなって。」
「へぇー。」
前に向き直した横顔も好きだな。大きな手が口と鼻を覆って、その手の中はきっとニヤついてる。自分を肯定されると急に照れる春馬くんが好き。
少し歩くと、大きな池のある公園に着いた。ベンチが等間隔で並んでいる銀杏並木が今年はまだ黄色になりかけの黄緑色で、夏が思いの外長かったことを思い出した。
だんだんと秋が短くなって、夏が長くなって、春夏秋冬が、春夏冬とか、もっと減って、夏冬とかなったらどうしよう。
そうしたら、こういう風に手を繋いで散歩なんかできないな。
暑すぎるのも、寒過ぎるのも、昔から変わらず苦手だから。
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