第2話
パジャマからロンTに着替えて、デニムを履いた。なんとも色気のないコーディネートではあるけれど、春馬くんは心配性なので、これでいい。
「奈央、準備できた?」
見ていたかのようにタイミングよく部屋に入ってきて、干していた靴下を渡される。
「奈央の虫の靴下乾いててよかったね。」
虫ではなくて、はらぺこあおむしなんだけどな、まぁいいけど。
春馬くんは自分が興味のないことにはとことん無頓着で、私の好きなキャラクターも虫とか、黄色の犬とか呼ぶ。
ごめんね、はらぺこあおむし。
ごめんね、ポムポムプリン 。
私は君たちが好きだよ。
靴下を履き終えて、立ち上がった私が少しだけよろけたのを春馬くんは見逃してはくれない。
「っ、奈央!」
そんなに大袈裟なことではないし、腕を掴んで支えてもらわなくてもきっと尻もちついたりしなかったよ。でも、私は、私たちはそうして生きてるから。
「ありがとう、春馬くん。」
「うん、大丈夫?」
「大丈夫。びっくりさせてごめんね?」
「うん。大丈夫、大丈夫。」
春馬くんの大丈夫は何回目だろうか。私の右側から音が消えたあの日から、春馬くんは、私を過保護に扱うし、大丈夫、大丈夫と言う。
それは、私に向けて言っているのか、春馬くん自身に向けて言っているのか、もはやわからない。
でも、いつでも私の左側にある春馬くんの大丈夫が私を私のままで居させてくれる。
春馬くんの声が好き。
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