第14話 クロウの状況とイアリスの状況


「民の異常な領ばなれ…それに、周りのガドナー家への認識。どうしてこうなった………すべてお前の!!お前のせいだクロウ」

「そうね………、私たちこれからどうやって信用を取り戻せばいいの」


少なくなった使用人と、クロウとその両親が一つの部屋に集まっていた。

クロウの一件は瞬く間に広がり、多くの信用を失った。時期領主となる男が嫉妬してほしかったがために、浮気を繰り返し、使用人を通して殺したのだ。そんな男が治めることになる街になど入れる訳がないと、多くの民は土地を離れた。


彼らの雇っている使用人でさえ、クロウへの忠誠心などない。あるのは見下しの、感情だった。


クロウの華の学園生活も、ほぼ終わったようなものであった。

彼の取り巻きの女は、また新しい標的を見つけクロウを見向きもしなかった。それどころか、イアリスの友人が流した話や今までの浮気相手の持つクズエピソードを流されて、まさに地獄の学園生活そのものだった。


「そのシェリー…、すまなかった」



一時はあんなにも尻尾を振るかのように懐いてきた女も、今となって全員敵だ…

懺悔として彼女らに謝っていったクロウだったが、全て無意味だった。



「クロウ様に話しかけられちゃった、どういうつもりなのよ本当気持ち悪い!」


陰口ももちろん耳に入る。話した事のない人にでさえ、日常茶飯事に何か言われている。


「人殺し」


イアリスの一件も、学園で広がっている。



彼を取り巻いているのは、孤独感と後悔。


「くそぅ…クソ。俺は……おれは」


毎晩、学園から帰ると枕に顔をうずくめ、元気さが亡くなった顔を擦りながら、嘆いていた。





一方そのころイアリスとシエルは幸せに暮らしていた。子爵夫人として。シエルの嫁として。


「あっリズ様~!」「みてみて、お花のネックレス!」


青色の花畑にシエルとイアリスは来ていた。すると五人の子供達がわっと二人を取り囲む。

イアリスはリズという偽名を使っている。髪や瞳の色をシエルの魔法で変え、顔の形こそ変わっていないもののパッとみただけでは誰もイアリスと気が付かないようにはなっていた。


「綺麗ね、わぁ、ありがとう。」


領地の子供達と戯れながら、シエルに溺愛される毎日。


「リズ、良く似合ってるよ。今すぐにでも画家を呼んで残したいぐらい」

「まぁ、なら一生忘れないほど目に焼き付けてくださいね」


前の国では得られなかった幸せがある…とイアリスは、子供にネックレスをかけてもらいながら思うのであった。

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