第10話 苦労
やはり家族は怒っていた。しかし、私にだけでは無い。クロウに対しても怒っていた。
あの男は浮気ばかりなのに、破棄までやらかしたのかと。多少のお叱りの後、家族は意外にも私に優しく接してくれた。私の方から婚約をお願いしたとなればもっと私にお怒りになると思いましたのに。
もしかすれば、縁談を持ち込んだのはクロウ側のほうかもしれない。…それだと、面白いですわね。
あの騒ぎがあった後、新聞にも私達の事が書かれたりした。そして、その新聞は街の壁に貼られたりしていると友人から聞いた。全く、私も有名になってしまったものだ。まあ、あまり嬉しく無い理由での人気者でありますが。学園でもこの噂でもちきりだそう。
「ほんとに、イアリス様の噂誰が広めたんでしょう…腹が立ちました」
シュナ様が、ティーカップを片手にぷんぷん言う。
確かに…ローズはそういう事を話す様な人には思えないけれど。
「お貴族様はそういう事がお好きですわ」
「嫌ではございませんの…?私はイアリス様が心配です、」
婚約破棄の事、心配してくれるいるのね。
なんて良い子なの。
「…その噂、最初イアリス様が悪女だったのが今では悲劇の女性になっていてクロウ様はどんな気持ちで今をお過ごしなんでしょう?」
婚約破棄は一方的だ。クロウ様の浮気の原因は私とされていたようですが、こうなってくるとまた違いますわ。
「あぁ…そうですねぇ、そちらも気になりますね、ふふふ」
二人は、声だけ聞けばただクロウのことも心配している様に見えるかもしれない。ただ、表情はあまりに恐ろしく、黒く澱んだオーラが見える。
__
クロウの家では。
「何てことをやらかしたのだ、クロウ!」
俺は父親に呼び出され、頬を殴られた。
分かっている、自分だって、本気でするつもりなどなかった。そりゃ、何度もやり直そうとしたさ。
でも、俺は婚約破棄ではなく、婚約解消をしようと考えていたのだ。二人っきりの部屋で、円満に解消を。
今日、このパーティに彼女と共に来たのは、イアリスは俺がちやほやされているのを見れば、流石に少しは嫉妬してくれるのでは、と試してみたかった、それだけの理由だ。まさか、あんな無関心そうに、冷たい目で見られているとは思わなかったが。
怒りは多少感じていた。
まさかあんなに口が動き、大きい声がでるなんて、自分でも信じられなかったが。それに、彼女が痛がっているというのに、手が離せない。
まるで誰かに操られているのかと考えてしまうほどスラスラと言葉が出てきた。
『イアリス・ガドナー!これまでの俺に対する侮辱行為と、俺の愛人への酷い扱いはもう見てられぬ!!今日を持ち、私とお前の婚約は破棄する!!』
……あの時、彼女はどんな顔をしていただろうか。
ショックのせいか、あまり思い出せない。ただ、悲しそうでも、悔しそうでもなかった気がする。
「クロウ、今すぐイアリス嬢に手紙をだせ」
「何故です、お父さま。」
「早くするのだ。そしてパーティの件についてもう一度話したいと書け、分かったな!!」
ビリビリと耳が震える声で父親が怒鳴る。
圧が物凄く、断れる雰囲気では無い。
「わかりました…」
俺は自室に戻って手紙を書いた。
謝罪は…いるよな。あと、父親の言っていたことと、日付と。
「ふふ」
完成だ。
……昔、イアリスからラブレターを貰った時を思い出すな。
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