第42話 いよいよ…
その後、私たちと別れた檻鉄さんは、次の日に集合することを約束した後に、鬼円がため息をついた。
そりゃ、巻き込まれたらそんな反応にはなるとは思うけど。
「はぁ、くそ。面倒臭いことに巻き込まれた…ってかなんだよいい経験って」
「いやぁ、不良と戦ったことないんだもの」
「普通戦わなくない…?」
鬼円の質問に香蔵さんがそう答えると、狸吉さんがツッコミを入れる。
そんな中、金之助君が目をキラキラさせ、ワキワキしだした。
「自分より強い相手と戦える…楽しみっすね!」
「パッパラパーな頭で羨ましいよ」
「? はいっ!」
これは無敵。
何を言っても効かなさそうな彼は置いておき、私は気になることを聞くことにした。
「ねぇ、『
「…知らないのか」
不良の話なんて知らないよ。
ため息をついた後に鬼円が説明を始める。
──3年ほど前に結成された不良グループ。未知の集合を意味する〝ゼノバース〟を名前として、悪事は働かずに自由にやっていたが、内戦が勃発。
その際に、『絶乃罵悪栖』と『
〝オムニバース〟はすべての可能な属性、および様態の集合を意味する言葉。
なんでも、『汚夢爾罵悪栖』はやっていなかったはずの悪事に手を染めるようになり、警察からも追われる身になっているんだとか。
なのに、何故かボスである『
「まぁ、そんな所だ」
「へぇ…なんか、凄いことに巻き込まれたね」
「まぁ、それはおいおい。帰ろっか」
香蔵さんの言葉に私たちは頷いた。
◇◆◇
「いいんですか、若?」
「なにが?」
信号が赤になり、車が止まる。
哲殻が檻鉄に聞くと、外の景色を見ながら檻鉄が口を開く。
「汚夢爾罵悪栖を潰すってことは、
その言葉に、檻鉄がピクッと動く。
その後に、拳を握る。
「潰したくねぇに決まってんだろ」
「……すみません。意地悪なこと聞いたっすね」
「いや、いい。事実だからな」
鬼円達との会話の時には見せていなかった顔を見せる。
その目は黒く、目に光が入っていなかった。
それを見て、哲殻がほんの少しだけ俯く。
『俺は一生アンタについて行くぞ。若』
その度に、何故あんなことになってしまったのかと、檻鉄は悔やむ。
「若、つきましたっすよ」
「あぁ」
少し大きな館。
その目の前についた檻鉄はザッと歩き出す。
その度に、館の前にいる男女達は頭を下げる。
その姿は、まさに絶乃罵悪栖という組織を束ねる男にふさわしい姿であった。
「おにーちゃーん!」
「おっ、羅救!」
お兄ちゃんと呼ばれ、こちらに駆け寄る少女を見て……その姿は一気に崩壊した。
少女が檻鉄の胸に飛び込むと、檻鉄は抱きつき返し、にこやかな笑みを浮かべる。
「お迎えご苦労さまだな!」
「うん!偉い?」
「おぉ、偉いぜ!」
そう言って頭を撫でると、えへへと笑う少女。
色々とあり、保護されたというわけだ。
「さて、これから忙しくなるぜ。哲殻」
「分かってますよ。若」
現在の時刻は6月29日。
約一週間後、その対決が起きる。
後に語り継がれるかもしれない不良グループ同士の戦争……『七夕戦争』が。
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