第41話 その男、モノホンの不良なり!
「やぁやぁ君たち!」
「ん?」
私たちが金之助君の事を立ち上げようとしていると、後ろから声をかけられる。
黒色の長ランっぽい服装で、黒髪の青年がこちらに駆け寄ってきた。
鬼円は木刀を握ってから「誰だ?」と呟く。
「まず自己紹介からだよな! 俺は
「……」
鬼円は木刀から手を離して、檻鉄という名前の青年の横を通り過ぎる。
檻鉄さんはえ、と言いたげな顔で振り向く。
「変なやつとは会話しねぇようにしてんだ」
「酷くねぇか?初対面でそれかよ、
「それ広めたヤツ誰だ!!」
『天下の鬼円様』という言葉に鬼円が青筋を立てながら言う。
それはそれとして、なんで鬼円のこと知ってるんだろう。たぶん、『天下の鬼円様』の件もあるだろうけど。
「話す気になったか?鬼円」
「……チッ、なんの用だよ」
すると、檻鉄さんは鬼円を指差す。
「単刀直入に言おう。俺たちの仲間になれ」
「…………あ?」
これには鬼円も困惑。
私達もそれを聞いて首を傾げる。そして、香蔵さんが檻鉄さんに近づく。
「何の話?」
「あぁ、悪い。まずは説明からだよな。なにから話すか……」
檻鉄さんは考え込んだ後に、口を開いた。
どうやら、何から話すかが決まったらしい。
「アンタら、『
「ゼノバース?」
私は知らないため首を傾げたが、ふと横にいる鬼円の方を向く。
鬼円は顎に手を当てた後に、頷いた。知ってるんだ。
「3年ぐらい前からある、不良軍団だよな」
「……まぁ、あながち間違いではねぇから否定はしねぇ」
やっぱりいつの時代でも不良っているんだな。
でも不良って最初に会った時に自己紹介とかしなくない……?
そんな考えが過ぎるものの、とにかく説明を聞く。
「俺らは7月7日、
「あぁ…?」
「驚くことはねぇ。お互いのシマの争いだからな」
わぁ、すっごいことに巻き込まれそうだ。
諦めに近いような言葉がさらに後ろで流れる。
「俺の戦力じゃあまず勝てねぇんだ。だからテメェの力を貸して欲しいんだ」
「はぁ、それで俺がはいそうですか、つって貸すと思うか?こっちのメリットがねぇだろ」
鬼円の言う通りだ。
こちらが手伝っても、檻鉄さん達にメリットがあるだけでこちらには何も無い。
手伝う意味が無いというわけだ。
「メリットならある。まずひとつに俺らが仲間になる」
「……」
「ふたつだが……おい、あれ持ってこい」
「え、アッハイ」
後ろにいるボディーガード…?らしき人が、車に走っていき、何かを持ってきた。
ま、まさか……よく映画とかで見る
バッグのようなものを開けて見せたのは……
「どうだ!『
DRAGON☆CUBEと呼ばれた漫画が大量に綺麗に敷きつめられていた。
狸吉さんと香蔵さんは口をポカンと開けて、鬼円は目元を暗くしている。
「ほれ、30年も前の漫画だぞ!」
「要らねぇーよ!!持ってるし!」
「持ってんの!?ファンなのかお前!」
なんか先程までのシリアスっぽい空気が抜けた気がする。
鬼円は乱暴に頭の後ろを掻き、「とにかく」と言葉を続けた。
「俺らに何もねぇだろ!」
「はーい、ストーップ、ちょーっといいかな?」
すると、香蔵さんが鬼円の首根っこを掴み、私の手も引いて後ろに下がる。
唐突のことに私たちはビックリして後ろを振り向くが、そんなのお構い無しなのか、檻鉄さんから少しだけ遠く離れたところで止まる。
「なんですか?」
私が聞くと、ニッシッシと笑い声をあげる香蔵さん。
そして、指を立ててニヤッと笑って言った。
「ねぇ、これも超能力部の仕事じゃない?」
「はぁ?」
鬼円の少しだけドスの効いた声を聞き、ビクッとなる。
だが、香蔵さんはそんなもの気にせずに続ける。
「ほら、部活の方針は『困った人を助ける!』でしょ?」
「そりゃ、そうだけどな……」
「何より、これもいい経験だと思うよ?マジモンの不良と戦えるいい経験」
「いらないと思いますそんな経験」
私と鬼円のツッコミをものともしない……というより聞いていない香蔵さんは、ニッコリと笑みを浮かべて檻鉄さんに近づく。
そして、香蔵さんは手を差し出す。
「分かった。手伝うよ……私たち、
「超能力部……ってのは知らないが、助かる!」
笑顔で差し出された手を掴んでブンブンと縦に振る檻鉄さん。
香蔵さんの発言に首を横に振る鬼円と、ため息をつく狸吉さんと鶴愛さん。
私は再び、とんでもないことに足を突っ込んでしまったと、空を見上げるのであった。
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