第40話 河川敷の戦い
「せぇっ!! のっ!!!」
「っ!」
金之助の飛び蹴りは鬼円には当たらず、空振りとなる。
だが、勢いが凄まじいのか、蹴りを放った方向に多少強い風が吹く。
鬼円も負けておらず、木刀を手に持ち、蹴りを放った金之助に向かって全力で振るう。
「あっぶね!」
金之助はギリギリで躱し、バク転で蹴りを返す。木刀は弾かれるものの、バク宙で回避する。
金之助はニヤッと笑い、もう一度走っていく。
鬼円は木刀を再び構え、金之助の攻撃を受け流す。
「っ!」
「おわっ!?」
受け流された金之助は勢いよくズザザッと顔面から地面に落ちて滑る。
その後に追い討ちをかけるかのように鬼円が木刀を振り下ろす。
その衝撃は凄まじく、木刀が地面に当たるだけで、河川敷に小さいながらも穴が掘られる。
「オラオラ!!」
「いいっ!? 殺す気っすか!?」
凄まじい威圧的な言葉で木刀を振るう鬼円にツッコミを入れる金之助。
なんとかゴロゴロと転がり、避けた金之助は地面スレスレで上方向に拳を振るう。
「マジか!?」
地面スレスレで放たれた拳は、風圧で地面を抉らせ、地面などにある小石諸々を鬼円のほうに吹っ飛ばす。
鬼円は目を守るために顔近くに木刀を持っていく。
上方向に拳を振るったことで体が空中に上がる金之助。
───勝機!
そう捉えた金之助は、空中で回転しながら蹴りを放つ。
だがそれは読まれていて、鬼円は体の姿勢を低くし、逆に卍蹴りのような形で金之助を地面に叩き落とす。
叩き落とされた金之助は、地面に手をつけ、腕のみの力で上にジャンプして離れる。
そして、顔面を抑えて、涙目で言った。
「痛っっ……!! 容赦ないっすね……!」
「そりゃ、お互い様だろ」
そんな金之助に向かってそう言うと、今度は鬼円が姿勢を低くしながら、金之助に近づく。
金之助は直ぐに気を取り直し、バックステップしながら鬼円の動作を見る。
鬼円は木刀を縦横無尽に振るい、着実に金之助を追い詰めていく。
目を細め、一点集中した金之助は鬼円の振るう木刀を白刃取りの形で捕らえる。
「っ!」
「へっへ〜ん、こんぐらいは出来ますよっ!!」
なんとか離れようと木刀に力を入れる鬼円だが、なんと力負けしていた。
足に力を入れこんだ金之助は木刀を持って鬼円を上に放り投げる。
その様子を見た香蔵は「凄ぉ……っ!?」と叫ぶ。
香蔵や狸吉にとって、鬼円は暴力の化身と呼べるほどの力を持っていた。
それが鬼円よりも一回り小さい青年に力負けするのだから、そんな感想が出て当然だろう。
上に放り投げられた鬼円はなんとか地面に着地しようと体勢を直す。
そして、地面にいる金之助を見て舌打ちするのであった。
「……チッ! 出待ちか?」
「当たりっすよ!!」
上に放り投げた鬼円を待つが如く佇む金之助。
落下予測地点といえばいいか、そこに立っている金之助は拳を構えて落ちてくる鬼円に拳を振るおうとする。
が、無論それだけでは避けられることはわかっている。
「だからこうするっす!」
二歩、三歩離れた金之助は、そこからダッシュして鬼円の横顔を全力で殴るようにする。
鬼円は木刀を盾にするように使って拳を耐える。
が、凄まじい力により、鬼円が吹っ飛ばされる。
地面に煙を上げながら後ろ向きでゴロゴロ転がっていく鬼円。
「まだまだ行くっすよ!」
そう言って走り出す金之助。
鬼円は体勢を立て直し、待ち構える。
金之助が目の前に来た瞬間に、木刀を力いっぱい握り、上に振り抜く。
「『日輪・戌之太刀』」
「ガッ!!?」
『日輪・戌之太刀』に当たった金之助は空中に吹っ飛ぶ。
が、それを逃がさない鬼円。
鬼円も同じく空中に行き、再び構える。
「へ、へへ……そりゃ、反則っすよ……」
「『
ごッと鈍い音が鳴り響いてから金之助が地面に叩き落とされる。
その影響か、大きな土煙が上がり、地面に大きなヒビが入る。
金之助はその中心でピクピクと体を動かしながらも、白目を向き気絶していた。
「チッ、まぁまぁ焦ったぞ。俺には勝てなかったけどな」
鬼円はそう言って木刀をしまって、鼻血を拭くのであった。
◇◆◇
「おい見たか哲殻! いま、凄い勢いで倒したぞ!」
「倒したって言うか試合でしょうあれ?」
「へ? そうなの?」
車の中で、望遠鏡を使う男と、運転席に座ってタバコを吸っている男、哲殻が会話している。
そして、望遠鏡を覗いていた男はシートベルトを外す。
「まぁいい! よし! 行くぞ!」
「えぇ、マジで行くんですか? 俺たちだけで勝てるでしょう」
「バッカ言え、お前、完膚なきまでに叩きのめしてこそだろ!」
やべぇこと言ってるなこの人。
内心そう呟く哲殻。タバコの火を消して同じくシートベルトを外してその男の後ろを歩く。
哲殻は溜息をつきつつ、目の前の鬼円達に悪いなと心の中で謝罪しながら、男の後を急いで追う。
この出会いがこの後に起きる事件の大きな幕開けになることを知らずに、彼らは出会うのであった。
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