第33話 話し合い
「幅次李。ちょっと話がある」
「……何?私に話したいことって?」
幅次李ちゃんは冷世ちゃんの言葉に反応して部室内で足を止める。
幅次李ちゃんのグルなのか、その近くにいた2人の女の子も立ち止まる。
「えぇ〜?無視していこーよ」
「そうそう。そんなヤツほっといてさ!」
幅次李ちゃんの近くにいる2人は、ケラケラと笑いながら冷世ちゃんを見ている。
クソっ……!なんか見てて嫌な気持ちになってくる……!
「ダメだよ、まだ出ちゃダメだ」
「でも……っ!」
一緒に隠れている狸吉さんが私を宥めてくる。
私達の作戦は、幅次李ちゃん、そしてあの2人がボロを出すまで耐え抜くという作戦。
冷世ちゃんがキツイだろうけど、本人はやる気満々だったのでいいのかな……?
それでも、この場はイヤなものが漂っている。
冷世ちゃんが耐えてるなら、私も耐えないとだ。
冷世ちゃんが口を開き、幅次李ちゃんに聞く。
「私をいじめてる理由ってなに?」
「……なんでアンタに教えなきゃ行けないの?」
幅次李ちゃんの声は低く、まるで圧をかけているかのような声だ。
あの時とは全然声が違うから、とても怖い。
冷世ちゃんは恐れずに、立ち向かっていく。
「そんなに私の事が嫌いなら、改善するから言ってくれないかな?」
「アンタの全部がキモイからでしょ〜?」
取り巻きの一人がそう言う。
冷世ちゃんがキモイだなんて、そんな訳がない。寧ろ、いい子だ。
だんだんと私の中で怒りが溜まっていくのがわかる。
「それに、アンタが気に入らないのよ」
「気に入らない……?」
『気に入らない』という言葉に冷世ちゃんが僅かながら反応する。
その後に、幅次李ちゃんがハッとした顔を見せる。
狸吉さんはそれを見て、目を細めた。
「何をしても、アンタの話題ばかり。私たちが活躍できない……それが分からないの!?」
「………」
冷世ちゃんは黙り込む。
まくし立てるように、幅次李ちゃんは続ける。
「私たちはたくさん活躍して、褒められたいし!もしかしたら活躍することで選手とかになれるかもしれない!その未来を取っていることが分からないの!?」
幅次李ちゃんは冷世ちゃんを指さす。
冷世ちゃんは幅次李ちゃんの目を見て言う。
「なら、私に勝てるぐらいに努力すればいいんじゃないかな」
「っ!!! それが出来たら苦労なんかしないんだよ!!」
殴りかかろうとする幅次李ちゃんを狸吉さんと私は飛び出して止める。
狸吉さんは幅次李ちゃんの手首を掴み、睨みつけるように立つ。
それを見て、取り巻きの二人がたじろぐ。
「聞かせてもらったけど…っ!それは間違ってるよ!」
私は叫ぶ。
幅次李ちゃんは「あの時のっ!」と口を開くが、構わずに私は言う。
「冷世ちゃんがどれほど頑張ってると思ってるの!!」
「っ……!」
「知らないよね!だって、
私の言葉に幅次李ちゃんは目を見開く。
そうだ。幅次李ちゃん達は、服を切り裂いたり、靴紐を切ったり、靴を隠したりしている。
だが、冷世ちゃんはそんなことを気にせず、たった一人で頑張って、努力していた。
イジメなんて言う卑劣で、酷くって、最悪なことをしている幅次李ちゃん達に比べたら……っ!
「ずっと、ずっと!!冷世ちゃんの方が努力してる!」
私の言葉に取り巻きの二人も黙り込んでしまった。
狸吉さんは幅次李ちゃんの手を降ろさせ、胸ポケットからボイスレコーダーを取り出す。
そこには、沢山の声が入っている。犯行している時の声。揺るがない……証拠だ。
「君たちのやった事は、立派な犯罪だ。それは分かるな?」
狸吉さんがそう言うと、幅次李ちゃんは部室の中にあるベンチに座り込む。
「……私は」
幅次李ちゃんは、まるで白状するかのように口を開く。
私たちは黙りこみ、話を聞くことにした。
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