第32話 覚悟を決めて!
夜、お風呂から出た私は、電話が鳴っていることに気付いた。
相手は……え、冷世ちゃん!?
「もしもし?」
『もしもし。夜にごめんね?』
「ううん、良いよ別に」
それで、要件はなんだろう? と思い、その話をする。
冷世ちゃんは、焦ったような感じで喋り始めた。
『貴方、もしかして部室に入った?』
「え? そうだけど…」
『もしかしたら怪しまれたかも』
「へ!? なんで!?」
私は素っ頓狂な声を出して、口元を抑える。
やばい、鶴愛さんが凄い疑いの目でこっちを見てる。変な声出しちゃったからか。
私は口元に指を立てて、静かにするように伝える。
鶴愛さんは何も言わずに、頷いて、押し入れの中に入った。
「ええっと、なんで?」
『…私のロッカーが少し開いてたみたい』
「……あぁ…」
『私、部室にはそんなに入らないし、今日は部室に入らずにずっと外にいたからさ』
それで、ロッカーが開いてたから怪しまれたと…。
もしかして、相手…幅次李って子は用心深いのかな?
いやでも、ボイスレコーダーはきっとバレてないはず。…………はず!
『…気をつけてね』
「分かった」
私はおやすみと言って通話を切った。
……怪しまれてる…か。見られてないなら大丈夫、じゃダメだ。
私は気を引き締めようと頬をパチンと叩く。
……本気でやるもんじゃないや…。
◇◆◇
次の日。
私と狸吉さんは部室に潜り込んでいた。
もちろん、周りに気を配りながらではあるものの、ボイスレコーダーを取る。
「どうですか?」
「……うん。証拠取れてるね」
良かった……!
これで、冷世ちゃんのことが助けられる…!
「ねぇ」
「っ!?」
後ろから声が聞こえてきた。
狸吉さんはすぐにボイスレコーダーを胸ポケットに隠して、振り返る。
後ろには、陸上部の子が立っていた。
その子は、私たちをまるで睨みつけるように見ていた。
「何をしてるの? ここは陸上部の部室よ?」
「ええっと……」
「私たちは超能力部で、今生徒会の手伝いをしてて部室のロッカーになにか無いかとかを見てたんだよ」
狸吉さんの咄嗟の嘘に私はブンブンと頷く。
彼女はふーん、と疑い深そうな目を向けてきていたが、見事に騙された。
「まぁ、勝手に見てるってことは抜き打ちみたいな感じなのね」
「そそ。部長にも伝えてくれると助かる」
「分かった。私が副部長だし」
その子は言った。副部長……。
「…あなた、冷世と一緒にいる子?」
「え? そうだけど……」
「あぁ、冷世の少ない友達の幅次李ね。よろしく」
「!! よろしくね。幅次李ちゃん」
この子が…冷世ちゃんを虐めてる首謀者…!
狸吉さんがいてくれて良かった…! もしもバレてたら私も冷世ちゃんも危なかった…!
「どうしたの? 私をそんなに睨んで」
「…その子、初対面の子には睨んじゃう癖があって」
「そ、そう……く、癖が強いのね」
狸吉さん!? 誤魔化せたのはいいけど、私になんでそんなに槍を向けたんですか!?
その後、適当に誤魔化しつつ、私たちは部室を後にした。
「勝手に変な癖をつけるのやめてくださいね?」
「ご、ごめんねって言ってるじゃん…」
狸吉さんに言ってから、私は考え込む。
あれが幅次李ちゃん…そこまでやるような悪そうな子には見えないんだけれども…。
まぁ、見た目より中身っていうけれど…。
私は部室を見て、少しだけ目を細めてから、目を離し、学校の中に入るのであった。
◇◆◇
『よし、誰もいないよね』
『切っちゃお切っちゃお〜!』
「クソが」
「こんなこと、言ってたんだ」
部室で、鬼円はそう悪態をつき、冷世ちゃんはまるで怖いものを見たように冷や汗を垂らす。
いや、事実怖いことに変わりは無いか……。
狸吉さんも拳を作って震わせている。相当そういうことが嫌いみたいだ。
「今すぐにでも突っ込んだらどうだ?多少荒々しくてもな」
「今回は鬼円に同意見だ。今すぐに行動を起こさなきゃ、これ以上にエスカレートする可能性だってある」
私は頷く。
当たり前だ。これ以上エスカレートさせてたまるか。
私はそう決めて、冷世ちゃんの手に優しく触れる。
「大丈夫。ね?」
「うん…ありがとう、みんな」
「狸吉と一緒に行けば多少何とかなるだろ」
鬼円の提案。
確かに、冷世ちゃん一人で行かせちゃダメだ。だからと言って、私だけがついて行くのもマズイし、暴力なんて振られたら対抗出来ない。
ここは狸吉さんも一緒に連れて、あの子達と話し合わなければだ。
っていうか、鬼円さっきから震えてるけど、何かあったのかな。
予想以上に冷世ちゃんの事でキレてる…とか?
「なんだ?」
「い、いや?別に…」
鬼円の顔が2倍ぐらい怖いんだけど。どうしたんだろあれ。
な、何かあったのかな…でも、聞き出せるようなものじゃないし…。
とにかく、今回の件。早く解決しなくちゃだ。
「鬼円はついてこないのか?」
「……あぁ、学校に野暮用が出来てな」
野暮用…?もしかして、なにかマズイことをやってるんじゃ……?
って、そんなことは無いか。鬼円だもの。
「それじゃあ、また明日」
「あぁ。また明日……な」
鬼円はそう、まるで含みがあるような言い方をして、部室を立ち去った。
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