第30話 歴史
冷世ちゃんと話し合い、とにかく言ってみることになった。
作戦なんかねぇよと木刀を持ち始めた鬼円を止めるのは大変だったけれども。
いつまでも暗い話はやめておこうと言うことで少しちょっとした雑談になった。
「……話は変わるけど、あなた達ってそんな仲良かったの?」
「……あ?何言ってる?」
急にそう言い出した冷世ちゃんを心底不思議そうに見る鬼円。
私も、お茶を危うく吹き出すところだった。な、仲良しって……。
「別に仲良しってわけじゃねぇがな……」
「…………え?」
私は鬼円の言葉に固まる。
うそ……?友達じゃなかったの……?仲良しって違ったの……?
「
「っ……!そ、それなら先に言ってよ!」
「何怒ってんだよ……」
鬼円から出てきた言葉に顔を赤くしつつ、ぷいっと横を向いてしまった。
な、なな、仲間……!仲間っ!まさか鬼円からそんな言葉が出てくるとは……!
って、何を焦ってるんだ私は!嬉しいけれども、焦ることは無いでしょ!落ち着け、落ち着け私!
「超能力部……言われてみれば、確かに不思議な部ね……」
「……不思議、か。そりゃ一般人の考えだろ」
「そうね。超能力と呼ばれる力を使って助ける部活だものね」
「
……あれ?
普通に超能力って話が出てるけど…私、鬼円に言ってないよね?
『話したいことがあるから家貸してくんない?』とは言った。けれども、『冷世ちゃんが能力者』とは言ってないはず……。
……あれ??????
「ええええぇぇっ!?なんで普通に会話してるの!?」
「え、だってバレてるし」
「え、だって知ってるし」
「嘘ぉ……」
「なんなら、お前以外の超能力部員……とは言っても、香蔵と狸吉はもう知ってるぞ」
嘘ぉ……。
え、じゃ何?この話が出る前からずっとみんな知ってたこと?
…………。一人ぼっちは寂しいよ……?
「悪ぃ、悪ぃと思ってる。だからそんな泣きそうな目でこっち見んな」
「言い方酷くない?????」
こっち見んなって……。
私は少しだけトホホと下を向いて項垂れた後に、冷世ちゃんの方を向く。
「冷世ちゃん、そういえばこの前の走り方ってさ…やっぱ、超能力?」
「……ズル…とは思ってるけど。他の人たちの走り方に『個性』があるように、超能力は私なりの『
確かに…。
って言うか、400mを70秒で走るってどのくらい凄いんだろ?
速いってのは分かるんだけど…。
「400mを70秒……たしか日本女子のタイムだと、最速で50秒ぐらいだったかな?」
「速っ!?」
「400mは陸上競技の中で最もキツイって言われてるけどな。お前の場合、そうじゃないだろ?」
まぁ、冷世ちゃんの走り方はまるでスケートみたいな感じだからね…。
陸上競技の中で最もキツイ…か。それほどの体力とかがなきゃ駄目ってことだよね。多分。
「ハイ、陸上競技の話はお終い。しかし、鬼円の家ってデカいのね」
「まぁ、代々受け継がれてる家らしいからな」
「え? 『鬼円』って、そんな古い歴史があるの?」
鬼円曰く。
鬼円家は古い昔……それも、江戸時代の頃から受け継がれているらしいのだ。
そして、鬼円家は普通の歴史上に出てくることは無いものの、その歴史は紡がれていて、その鬼円家当主全員が剣道を覚えたとのこと。
「……す、凄い家系……なんだね…」
「詳しいことは俺も知らないし、知らなくてもいいと思ってるし」
鬼円はそう言って寝っ転がってしまった。
江戸時代から…ってことは今から大体……4、430年!?
「そ、そんな長く続いてるの…!?」
「? 大体の家系って長く続くだろ」
「そりゃ、そうだけど……」
私が狼狽えていると、鬼円は冷世ちゃんの方を向いて、「あっ」と声を出した。
「そういえば、お前の髪って染めてるのか?」
「………地毛」
あぁ、そういえばこの高校髪染めていいんだった…。
って、地毛なの!? てっきり髪を染めているのかと…!
「お前、外国人のハーフだったりすんのか?」
「日本と、ロシアのハーフ…」
「通りで美人と思ったら……」
私がそう言うと、少し驚いたような顔をした後、頬を赤くしてそっぽ向いてしまった。
ロシア人って、髪が黄色だったりと……って、それはただの偏見か。
っと、そこで5時になっている事に気付いた。もうそんな時間か!
「とにかく、何とかしてみせるから、冷世ちゃんは心配しないでね!」
「っ…! うん。ありがとう」
冷世ちゃんは久々に見せる、
これを裏切りたくないし、裏切らないようにしないといけない。
私は心の中でそう強く思いながら家に帰ることにした。
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