第13話 危機脱出!


 「は?」

 「え?」


 私と鬼円が惚けたような声を出す。隣にいた蟹菜ちゃんがツンツンっと突っつく。

 私がそちらの方を見るとニコニコと笑っていた。


 「良かったね!顧問出来たじゃん!」

 「え、あ、うん…」


 その言葉に頷く。

 が、内心困惑していた。いきなり顧問が出来たわけだ。しかもなんの理由も無く。

 そんな私の困惑もよそに、集会は終わりを告げた。





 ◇◆◇





 放課後。

 私は超能力部の部屋に入ると、香蔵さんと狸吉さんがお出迎えしてくれた。


 「や、春ちゃん!怪我は大丈夫?」

 「香蔵さん。はい、一応怪我はなんとか…」

 「良かった…ごめんね。調べ事があったからさ…」


 狸吉さんがそう言って頭をポリポリと掻く。すると、ガラガラっと後ろの扉が開く。

 そこに立っていたのは…


 「あ、小日向ちゃん!暁琉君!」

 「ど、どうも〜」

 「お姉ちゃん…」


 暁琉君はお姉さんの方をジト目で見ていて、小日向ちゃんはソファに座る。

 そして、ぺこりと頭を下げてきた。


 「えっと、ありがとう!本当にありがとう!」

 「え、そんな頭下げなくていいよ!」

 「そそ。春ちゃんの言う通り。頭を下げなくていいよ。感謝するなら暁琉君にしな」


 香蔵さんがそう言うと、小日向ちゃんは頭の上に『?』を浮かべて首を傾げた。


 「なんで暁琉に?」

 「暁琉が、私たちに依頼してきたの」

 「暁琉…ありがとう」


 暁琉君は感謝されたのが恥ずかしかったのか、顔を背けた。

 そして背けたまま口を開けた。


 「べ、別にお姉ちゃんのためじゃないし。お母さんが帰ってこなかったら心配しそうだったから…」

 「え?でも泣きながら…」

 「わぁ!わぁ!聞こえない聞こえない!」

 「あっはは!」


 私が何か言おうとした時に暁琉君が大袈裟に大きな声を出して遮って、それをみた香蔵さんが大笑いする。

 小日向ちゃんもそれを見て、ふふっと笑う。


 「その、怖かったんだ。監禁されてる時…暗いロッカーの中でさ」


 小日向ちゃんがそう言うと、暁琉君が手を掴む。


 「そんなこと忘れてよ。お姉ちゃんの笑った顔の方が俺は良い」

 「暁琉……暁琉…!」


 目が潤ったのか、小日向ちゃんは手で目の辺りをゴシゴシと擦った。

 時々、嗚咽が聞こえるが、私たちは微笑んだまま見ていた。


 「とにかく、ありがとう。私、救われたよ」

 「うん。良かった」

 「これで依頼解決ってことよね!」


 香蔵さんがそう言って腕をグッと上げる。

 小日向ちゃんと暁琉君は2人で頷いた。良かった…。


 「ほんとに、お姉ちゃん助けてくれて、ありがとう!」

 「うん!」


 暁琉君がそう言って頭を下げて、香蔵さんニッコリと笑った。







 ◇◆◇





 「さてっと……香蔵さん」

 「うん。みんな集まったみたいだしね」


 香蔵さんがそう言って私たちを見る。

 その後にふぅ、とため息をついてから目を開いた。


 「顧問が、出来ました!」

 「いやいや待てや!」


 香蔵さんが大声で言ったことに待ったを掛けたのは鬼円。

 香蔵さんが首を傾げる。


 「どこに待つ要素が?」

 「色々だ色々!まず、顧問が出来たことは別にいい!だが、いきなりすぎんだろ!何も予告されてねぇぞこっちは!」


 鬼円が香蔵さんの方を指差す。

 すると、横から顔を出したのは狸吉さんだった。


 「私たちは聞かされた。と言うよりも、顧問の件については元々話していたんだ」

 「へ?そうなんですか?」


 私がそう言うと、コクッと狸吉さんが頷く。

 曰く、元々は香蔵さんが立てようとしていて、たまたま鬼円が入ったことで部活として成り立ったらしく、顧問も見つからなかったのだ。

 そうこうしているうちに1年経ち、いよいよ不味くなってきたところで私が入ってきて、顧問も決まったというわけだ。


 「つまり、これはなんの問題もないのだ!」

 「いや、そもそもの話は『成果を上げる』はクリアしたんだろ?」

 「うん。小日向ちゃんのおかげでね!」


 どうやら、生徒会会長のみに真実を教えてくれたらしく、小日向も事件に関与していたこともあり、会長はこれを口に出さないし、成果も認めてくれたのだ。


 「顧問も決まったことだし、部活の存続は保たれた!」

 「……まぁ、それでいいのか…」

 「あはは、まぁ、いいんじゃないかな?」


 部活も保たれたわけだし……ね?

 その後、狸吉さんからメールが来て、香蔵さんはルンルン気分で帰ったそうだ。私は苦笑いしか出来なかった。

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