第12話 解決!
翌日、学校には警察の車両が来ていて、理科室は閉鎖されていた。
私はそれを横目で見ながら、登校した。
「は〜るちゃん!」
「うわ、蟹菜ちゃん!」
「うわって何、うわって?」
後ろから蟹菜ちゃんが飛びついてきたのだ。
蟹菜ちゃんは右前の席に座り、私の方を向く。
「ねぇ、理科室の件知ってる?」
「あぁ、小村樹先生の?」
蟹菜ちゃんがそそ。と頷く。
私が小日向ちゃんを家に送ったあと、メッセージで狸吉さんから『先帰ってていいよ』と来たためそのあとのことは知らない。
そして、狸吉さんが警察に事情聴取されることとなってしまったのだが、あくまで子供。
うまく言いくるめたらしく、結局、誰にやられたのか分からずに小村樹先生は逮捕された。
学校ではこの事件に対して「ヒーローがやった」とか「準備室がやっぱり怪しかった」とかなんやら…。
まぁ、それでも私は知らないフリをしておく。バレたら面倒くさそうなので。
蟹菜ちゃんが指をピンッと立てる。
「私、やっぱりあの先生怪しいと思ってたんだよね〜」
「そうなの?」
「嘘つけ」
「嘘つかない方がいいよ」
私が蟹菜ちゃんの話を聞こうとした時、後ろから2人の言葉が聞こえてきた。
その2人とは、鬼円と冷世ちゃんであった。
「だって、準備室に色んなもの隠しやすいでしょ?」
「でも、薬品とかじゃない? とお前言ってたぞ?」
「……よくそんなこと覚えてるね」
蟹菜ちゃんが鬼円の言葉に凍りつき、冷世ちゃんが意外と言った顔をして鬼円の方を見る。
「それよりも、今日
「全校集会?」
私の言葉に冷世ちゃんが頷く。
「知らないけれど、どうせ先生のこととかじゃ無いの?」
「…十中八九そうだろうな」
鬼円が冷世ちゃんの言葉を肯定する。
すると、先程まで凍っていた蟹菜ちゃんが復活する。
「新しい先生来るのかな?!」
「多分。だって化学の先生って小村樹先生だけだったでしょ?」
「確かに…」
じゃあ、新しい先生が来るのか。どんな先生だろう…?
「でも、怖い先生は嫌だな…」
「春ちゃん、怖いの嫌いなの?」
「いや、誰だってそうだとは思うけどね…」
冷世ちゃんがそう言う。
ま、まぁ、そうだけどね…。
◇◆◇
私たちは全校集会の開始を待っていた。
生徒たちは、小村樹先生の件が明かされるのかと騒いでいたり、逆に面倒くさそうにしていたりと、各々自由な反応を見せていた。
すると、スーツをかっちりと着込んだこの学校の校長が舞台袖から出てきて、少し緊張した様子のまま、舞台の右端に立った。
「こんにちは。え〜本日、小村樹先生の件ですが、先ほど無事に終了し、警察の方々が帰られた事を皆さんにお伝えします」
『えー』だとか、『なんだよ』とかいう風な声があちこちから上がる。
余りに短い捜査に、他の生徒たちは大した事件じゃないと悟ったようだった。
私はその様子にホッとしていた。
まぁ、そんな一日で終わるのか?と聞かれたら怖いところだが…狸吉さんがうまくやった!とメッセージしていたから何とかなるのだろう。
「そして、皆さんにお知らせがあります。2年生の化学の授業を務めていた小村樹先生が退職することになりました」
あ、蟹菜ちゃんが話してた…。
「そして新しく、本校に、先生がいらっしゃることになりました。先生、前へ…」
前へ出てきた先生は、男の先生であった。
黒いボサボサな髪に、髭も生えていて…とても先生には見えない。
その姿を見た生徒達から困惑の声が漏れる。
「はい。新しく入る
そう言って軽く黎矻先生は会釈をする。
私はそんなに気にならなかったけど、次に発せられた言葉で固まることとなった。
「ちなみに、俺自身
私と鬼円が口を大きく開ける。
「は?」
「え?」
そして、惚けたかのような声を出した。
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