第11話 カチカチ


 「た、狸吉さ、ゲホッ……!」

 「落ち着いて深呼吸しな?」


 私は狸吉さんに言われた通りすぅ〜と息を吸い、はぁ〜と息を吐く。

 そして狸吉さんの方をキッとした顔で向く。


 「ほんとにどこ行ってたんですか!!怖かったんですよ!?」

 「ご、ごめんて…」


 っていうか、ここ外?

 私は学校の方を見ると、理科室の窓が一個開いており、そこから飛び出したんだと分かった。

 狸吉さんの隣を見ると、腰を抜かしている小日向ちゃんが見えた。


 「この子が小日向ちゃん?」

 「は、はい!」

 「OK。あとはあいつぶっ飛ばすだけね?」


 そう言って、狸吉さんが前を向く。

 私も同じく前を向く。すると、理科室から出てきたのか、小村樹がそこにいた。


 「凄い早かったね……まるで人間じゃなかったみたいだ」

 「……犯罪者にそう言われるとはね」


 狸吉さんがニヤケながら言うと、まわりの空気がビリッとする。

 あれ、小村樹の目……


 「ふふ、もう1人殺すことにはなったけどね!」


 すると、どこから取り出したのか、銃を取り出した小村樹。

 それを見て、ヒッと声を上げる小日向ちゃん。私は小日向ちゃんに抱きついて大丈夫と小声で宥める。


 「春ちゃん。そのまま抱いてて」

 「狸吉さんは?」


 狸吉さんは地面に手をつけ、フフッと笑う。


 「香蔵ちゃんが言ってたでしょ?能力に慣れてほしいって」


 狸吉さんはそのまま地面を削るかのように指を途中まで閉じる。

 すると、カチカチと何か、音が鳴り始めた。

 その音を聞いて小村樹は首を傾げた。どうやら、私以外にも聞こえているようだ。


 「……あ?」

 「ふぅぅぅぅ……」


 狸吉さんが息を吐く。

 更にカチカチという音が鳴り始める。そして、私の目に映ったのは……


 。いや、空中から火花がカチッと弾ける場面である。


 まるで、幻想的な、空想的な……だが、確かに火花であった。

 その火花が更にカチッカチッと狸吉さんを囲むかのように増えていく。


 「私の能力ね……『火』なんだ」

 「狸吉……さん……!」


 私が驚いていると、カチカチと鳴っていた火花が狸吉さんを包み、狸吉さんの体に炎が付く。

 その狸吉さんは、微笑みながらこちらを見ていた。


 「さて、終わらせようか!」

 「何ごちゃごちゃ言って!?」


 狸吉さんが地面を蹴ると、瞬間で小村樹が奥へと飛んだ。

 狸吉さんがぶっ飛ばしたのだ。一瞬で近づいて……。

 速すぎた。見えなかった……。あんな早く動けるなんて……!


 「技を使うまでもないかもね」

 「ッ……」


 それを聞いて、プツンときたのか、こめかみに青筋を立てながら小村樹が立ち上がる。


 「ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」


 そう叫び声を上げながら小村樹が銃を狸吉さんに向かって撃つ。だが、狸吉さんはそれをいとも容易く避け、再び小村樹の腹に一撃をぶち込んだ。

 すると、ボッ!と言って小村樹の背中から炎が飛び出でる。その瞬間に小村樹が血を吐いた。


 さらに叩き込むかのように顔面と足に蹴りをいれる狸吉さん。

 そして、最後はもう1回腹を殴り、小村樹を壁に叩きつけた。


 「オガッ………」


 そのまま小村樹は意識を失ったのか背中を壁につけながら倒れ込んだ。


 ボボボと燃えていた狸吉さんは炎を消して、持ってきていた縄で小村樹を縛った。


 「あ、呆気なかったような……」

 「……ねぇ、終わったの?目開けていいの?」


 小日向ちゃんが私の服を掴みながら言った。私は優しくいいよ。と呟いてあげる。

 小日向ちゃんが目を開き、小村樹の方を見る。


 「ほ、ほんとに終わったんだ……良かった…よか……うわぁぁぁん!」


 相当怖かったのだろう。小日向ちゃんが泣き喚き出した。私は小日向ちゃんの背中を擦りながら狸吉さんの方を向く。


 「任務達成、だね!」

 「小日向ちゃんを家に帰さないと。それと、警察も…」

 「そうだね。あ〜明日は集会かな……」


 狸吉さんはそう言いながら、警察に電話をかける。

 こうして、小日向ちゃん行方不明事件……私が超能力部に来て最初の依頼は終了したのであった。

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