第8話 舞雨さんの元彼って……!
僕と夏陽さんは遊園地でたくさんのアトラクションで遊んだ。楽しすぎて時間を忘れてしまいもう日は暮れ、漆黒の夜がおとずれる。
「今日は楽しかったな、。ありがと……そろそろ帰るか?」
「まだですよ、夏陽さん!」
「まだどこか行くつもりなのか?結構暗いけど」
夏陽さんの時間感覚は僕とは違うようだ。これからが本番だというのに……。
「まさか……このまま藤都くんの家に行ってお泊まりコースじゃないだろうな……いくらデートとはいえ恋人同士ではないし!それに藤都もオレも舞雨のことが……」
夏陽さんは何を想像したのやら変なことを口走りはじめた。
「何を言っているのですか?そんなわけないじゃないですか……夏陽さんのことはきらいじゃないですけど僕は自称一途な男ですので!」
僕の訂正の言葉を聞き、安心したように胸をなでおろした夏陽さんに対して僕はどう反応すれはいいのやら……。
「で、どこに行くんだ?」
「観覧車です!」
「観覧車?」
「はい!観覧車で夜景を見ましょう、デートのフィナーレですよ!」
「いいけど……」
よし!この遊園地の観覧車から見る景色がネットで好評だったので見てみたいと思ってたところだったので夏陽さんがオッケーしてくれて良かった。
観覧車がのぼりはじめる。
「夏陽さん!まだてっぺんではないですけど綺麗な夜景ですね……夏陽さん?」
夏陽さんはぼーっとした様子で外を眺めていたが僕の呼びかけではっとしたように体を反応させた。
「夏陽さん、何か考えごとですか?」
「いや……むかし観覧車のジンクスとか流行ってたなーって」
「今も流行ってますよ!観覧車のてっぺんでキスを交わすと結ばれるとかうまくいかなくなるとか……ってもしかして夏陽さん、僕とキスしたいんですか〜」
「違う!そんな話あったな〜っていう世間話だよ!」
そんなことわかってますよ……。夏陽さんはきっと舞雨さんのことを考えていたんだ。もしかしたら一緒に観覧車に乗ったことがあるのかもしれない。なんとなく胸がもやっとした。
微妙な雰囲気になるなか観覧車はてっぺんを越えた。あとは下にいくだけだ……。
沈黙をやぶったのは夏陽さんだった。
「藤都くん……今日はありがとな、京馬のことで心配してくれたんだよな」
気づかれていたようだ。
「この前……舞雨の過去について少し話をしたよな……事故があったって……」
「そうですね……そのあと家族に責められ強制的に別れさせられたって……」
「舞雨はそのあと引っ越した……僕と元彼であるあの人と離れるために……でもそれと同時に家を出たオレとは高校で再会してしまった」
「家を出た……?」
「オレ、家族と縁をきったんだ……」
え?まさか……
「オレは事故の責任をすべて舞雨に押しつけたことがどうしても許せなかった!」
僕の脳内で1つの仮説が浮びあがる。でもその仮説が当たってしまうと夏陽さんは……!
「舞雨の元彼はオレの兄貴なんだよ……」
観覧車はゆっくりとスタート地点に戻る。しかしまたゆっくりとてっぺんへと動きだす。まるで終わりなどないかのように……。漆黒の夜を背景に夏陽さんの瞳はいつまでも同じように揺れていた……ように見えた。
あめが降るのはいつだっけ。 桜吹雪 @ama-yadori
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