第4話 雨を恐れる理由
今日も雨が降っていた。
大学を終え、カフェに向かう僕は傘を持っていなかったので雨の中走っていた。丁度、信号待ちのタイミングで隣を走っていた車がいきなり止まり、中から僕を呼ぶ声がした。
「藤都くん、これからバイト?」
声の主は夏陽さんだ。正直少し気まずい。
「はい、今からバイトです」
「傘を持ってないみたいだけど……良かったら乗ってく?今からカフェに向かうところだったしさ」
二人きりの車内はお断りしたいところだが、これ以上濡れてしまうと舞雨さんに迷惑がかかるかもしれないと思った僕は乗せてもらうことにした。
「カフェに向かうところって言ってましたけど舞雨さんに会いにいくつもりでしたか?」
「まぁ、そんなところかな……雨の日はいつもあいつが会いに行ってるんだけど……今日は来れないらしいから代理で」
僕は、何の話をしているのか全くわからなかった。
あいつとは誰のことだろうか……?
どうして雨の日に会いに行くのか。
もしかして……
「もしかして舞雨さんって雨が怖かったりします?」
「……よく気づいたな」
やっぱりそうだったのかと僕は納得した。僕が舞雨さんを好きになった日は雨が降っていた。その雨を見て怯えていた舞雨さん、そして雨の日には必ず誰かが会いに行く理由、全てが僕の頭の中でつながったのだ。
でもどうして雨が怖いのか……。元彼の京馬さんや舞雨さんがいつも悲しそうなのと何か関係があるかもしれない!そんなことを考えている僕に夏陽さんが話しかけてきた。
「この前はごめん」
「え……急にどうしたのですか?」
突然の謝罪に僕は戸惑いが隠せない。
「舞雨のことを聞かれたとき冷たい態度を取ってしまってごめんな……あの後、慈音から連絡がきて……藤都くんと何かあったのかと聞かれて正直に答えたら怒られたよ」
「え……!」
「藤都くんが舞雨のことが好きなのに気づいててさ、舞雨も藤都のこと可愛がっているようだったから舞雨の大切な人について話せなくて……」
「どうしてですか?」
「もし、話してしまって……藤都くんが舞雨に対して態度を変えてしまったらどうしようって思ったんだ。それで舞雨を傷つけてしまったらって……」
そんなことにはならないと僕は強く思った。それが顔に出ていたらしい。夏陽さんは少し笑って話を続けた。
「でも……慈音から藤都くんの話を聞いてちょっと安心したんだ、この子なら話しても大丈夫かもしれないって……ねぇ、全てを話すことはできないけど聞いてくれるかな?」
舞雨さんの過去を受け入れる準備はできている。僕は、夏陽さんの顔をしっかり見ながら大きく頷いた。
「実は……」
その頃の舞雨は、窓やカーテンを閉めても聞こえてくる雨の音に怯えていた。そんなとき、店の扉が開いた。藤都だと思い、ふりかえった舞雨の視界に入ってきたのは懐かしいあの人だった。
「久しぶりだね、会いたかったよ……舞雨」
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