第9話激突

私は剣に手を掛け、呼吸を整える魔人城正門まであと少し、もうすぐマヒトに会える。

私の気持ちを察してかマーシャが肩に手を添える。

「リン…もしもの時はお前が…」

解っている、もしもマヒトの心が戻らないなら斬る、つらいが魔神として生き続けるなど彼も望まないだろう。

「わかってる…」

「そうか、私も出来うる限りの事をする」

「くく、俺達を歓迎してくれるようだぞ!」

勇者が口元を歪めながら城門を指さした、城の中から機械人形が沢山出てくる、魔獣型やザンキと呼ばれた剣士型もいる。

「取り敢えずマーシャは魔法射程に入ったらデカイのぶちかましてくれ!」

勇者の決定に私達は従う、数では勝てない、だから短期決戦による勝負にでた。

移動しながらマーシャは呪文を詠唱する、彼女が指定した空間にプラズマの檻が出現した。

「トカマク!」

プラズマの檻の中に爆炎が発生する、機械人形たちは原型を留めてはいるが停止した。

私と勇者は剣で機械人形を斬り伏せてゆく、勇者の聖剣と違い私の剣は特別な物ではない。

マーシャの魔法で強化してあるが、折れない様に繊細に振るっていく。

予備の剣用意してあるが保ってほしい。

「ははっ、大した事ないな!!デカブツ!!」

勇者がザンキを真っ二つにした、やはり成長スピードが異常だ。

『カラも幼馴染みではあるが……今はマヒトに会わなければ…』

幼馴染みのカラの豹変振りは異常だった、聖女パトリシアに何かされたのは間違いないが、何も出来ない。

「伏兵だと!」

勇者が叫ぶ、あと僅かで城に入れる、まさにその時背後から機械人形が姿を表した。

「マーシャさん、リンさんここは食い止めて下さい、私と勇者様にで魔神を打ちます」

パトリシアが宣言する、やはりこうなったか、合理的だから反論できない。

「心配するなリン、私とお前ならやれる!」

マーシャは私を勇気付けてくれた。

「頼んだぞ!二人共!」

勇気は聖女を連れ奥に進んでいく。

早くこいつらを片付けて行かなければ、マヒトが倒されてしまう。

「冷静になれリン!私達ならやれる」

マーシャはそう言うと呪符を渡してきた。

「魔法で勇者にマーキングした、こいつらを倒したらその札を頼りに後を追うのよ」

「そうだな!」

私は剣を構え敵を見据えた。



狙い通り私と勇者様は魔人城に突入した、あの二人は私を疑っている、戦力の分断は危険ではあるが使命を果たしやすくなった。

私は光学迷彩の施された極小のドローンを放つ、この城の何処かにあるオートマータの制御室を見つけ出すために、オートマータを無効化し、可能であればアダシノのナノマシン技、術を持ち帰る。

『お父様は仰っていた、アダシノさえ裏切らなければ不老不死さえ人間は達成出来たと…』

私は期待していた不死はともかく、不老は可能ではないかと、お父様は特殊な薬液で満たされた水槽で身動き出来ないが、アダシノは今も自由に動き周っている。

『お父様は死んだけど、弟子全てが殺されては居ないでしょう、彼らを利用すればずっと美しいままでいられる…』

その為には勇者にアダシノを倒してもらわないといけない。

私達が進んでいくと大広間にでる、中央には魔神アダシノ、そしてザンキと呼ばれる剣を使う機械人形が四体と魔獣型が幾つかいる。

「これが最期だ…聖女パトリシアよ、降伏しろ…全員の命は助ける」

アダシノは勇者ではなく私に交渉してきた、なるほど勇者が私の傀儡というのは理解できてるのね。

「はっ、その程度の数で勝ったつもりか!?」

「ええ、勝つのは私達です!」

私は勇者を肯定する、彼こそ、この日の為に調整した兵器なのですから!!



「イネイ!!」

マーシャが呪文を唱える、機械人形の足元が霜に包まれる、私は動きが止まった瞬間に薙ぎ払う。

「くっ」

霜を回避した魔獣型が飛び掛かってくる、私は紙一重で躱し斬り捨てる。

「数が多すぎる…」

二人が城に入り大分時間が立つが処理しきれない。

「リン……今から高威力の呪文で周囲を焼き払う!!」

「そんな呪文を使って大丈夫なのか?」

私はマーシャを心配した、まだ目立って居ないが彼女は勇者の子を身籠っている。

「平気よ!呪文を唱える始めたら一気に城にむかって!」

「しかし!」

「賢者シスイはアダシノを止められなかった!!殺さないで止めらるのなら、それは私の先祖の無念を晴らすことにもつながるの…だから!」

「また会おう…マーシャ!」

「ええ、またお茶を飲みましょう」

私は全力で城に向かって走り出す。

「死の指よ我が呼びかけに応えよ!」

マーシャが呪文を唱えると十個の魔法陣が空中に現れる。

「滅びの十光解き放つ!システマ・ペリメトル!!」

魔法陣から超高熱の光の柱が降臨する、眩い光に包まれ、周囲のものすべて灰燼とかした。

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