第8話決戦前

私は赤く手形の着いた左の頬を座押さえた。

ダメージの回復が遅い、体に注入したナノマシンの効果が殆ど無い。

アリシアにビンタされた所が痛い、今の彼女は常人並の力なのでこの程度ですんだが、いつ以来だろう女はビンタされたのは……  

「確かリンの手当をした時に……胸を見てしまって……」

私はハッとする、いま呟いたリンとは誰なのだろう、胸が苦しい。

私は肉片から再生が子供で止まり、何処かの集落で育ったと推測したが、その時の大切な女性なのか……頭が痛むばかりで、はっきり思い出せない。

「この人が理由か……」

伊能先生とのケリを着けたら、もう死のうと思っていた、子供の数も増えた、自分が恐怖というス トれ

レスを与えなくても人は増え続ける、全てのオートマータに自壊命令出して終わりにしようとしたが、アリシアに情を掛け今も生きている。

再生前には無かった、心残りが存在していたのだ。

記憶を取り戻す前の自分は幸せだったのだろう、虫の良い話だが、魔神である事を思い出さないで死ねたらどんなに良かったか……



魔神城手前の泉で勇者パーティーは野営をしていた。

「明日、魔神城に乗り込む」

私は遂にその時がと思った、マヒトがアダシノ自身なら勇者より先に会い何とか記憶を取り戻さなければならない。

カラはアダシノがかつての幼馴染みでも躊躇いなく斬るだろう、聖女と出会い変わってしまった。

「作戦は?」

マーシャが尋ねる。

「先日、私自身アダシノと戦いましたが、やはり魔神をたおせるのは勇者様だけです」

パトリシアは神妙な面持ちで告げる。

「アダシノに小細工は通用しません、魔神城正門から行きます、全員で中に入るのが理想ですが……状況によってはリンさんとマーシャさんの二人で敵の注意を引いて貰います」

不味いな状況によっては私とマーシャで敵を食い止め、聖女と勇者が魔神の元に向かう。

パトリシアはマヒトに思入れがなく、前回手酷くやられている、魔神の正体がマヒトであっても構わず倒すだろう。

そうなったら敵を早く片付け追いかけるしか無い、勇者が魔神を倒すまえに駆けつけ、マヒトに訴え掛ける、あとはその場で何とかするしかない。



「アリシア気持ちは決まったか?」

私はアリシアに話し掛ける、彼女に仲間の集落に行くか、教団に帰るか答えを求めたのだ。

「貴方の仲間の集落に行きます…」

アリシアは落ち着いた口調で答えた、先日魔神アダシノのである事を告白した時はいきなりビンタされたが、どういう心境の変化だろう。

「お父様が倒れたいま、教団にはもどれません、殺されはしないでしょうが、お父様が押さえ込んでいた方々が何をするかわかりませんから…」

なるほど教団も一枚岩では無く、先生の力で纏めていたと言うことか。

「わかったオートマータに後らせる、集落らくの代表にこの手紙を渡せば良くしてくれる筈だ、話は通してある」

私は手紙と鞄を渡す、数日分の食料と着替え、金貨が入っている。

「これからパトリシア達が訪ねてくるのでね、悪いが付き添えない」

「そうですか……パトリシアも殺すのですか?」

震える声で尋ねてきた。

「殺すのは最後の手段だが、パトリシアは君の事を酷く言っていた、思いやることはないとおもうが?」

「私が聖女に選ばれなかったのは事実ですから、それにパトリシアも小さい頃は可愛かったんですよ」

「そうか…」

全くらしくない、こんな事に感情を動かさせるなんて…。


アリシアを送り出すと勇者達の歓迎の準備をする、再生時にオートマータとナノマシンの製造方が頭から抜け落ちてしまった。

次殺されたら終わりだ、もう再生出来ないし、新たなオートマータを作る事も出来ない。

もう一度パトリシアを説得しては見るが無理だろうな。

前回の戦闘データを見ると勇者カラは薬物等により身体の強化が随分進んている、剣士形のザンキなら複数同時に相手にできる。

おそらくパトリシアは最期の戦いで勇者を使い潰す気だ、最終戦でどんな無茶な強化をするか解らない、出来るだけの準備をしないとな。






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