第7話千年前の真実
私達は魔神アダシノを取り逃がした、死人こそ出さなかったが手痛い敗北だった。
いつもの様にマーシャと私は同じテントになった、野営の準備を終えると焚き火の前で二人でお茶を飲む。
「アダシノと何があった?」
マーシャが尋ねる、どうしよう…アダシノがマヒトと同じ顔をしていたと打ち明けるか?
幸いパトリシアは気を失っていたので見られていない、私は迷ったがマーシャを信じ話すことにした。
「アダシノの素顔を見たんだ……マヒトと同じ顔……たがマヒトとは幼馴染みだ千年を生きる魔神な理由は……」
「考えてられる事は二つ、一つはマヒトは魔神に体を乗っ取られた……二つ目はマヒトが魔神本人だった」
「マヒトは善良な男で、しかも同じ村で一緒に育ったあり得ない」
マーシャは暫く考えたあと語りだした。
「千年前……あらゆる問題を解決する為に世界中から優れた賢者が集められた、私はその賢者の一人…酒々井の末裔なんだ…」
「千年前?魔神アダシノが現れた時期か?」
「そう……アダシノも賢者の一人だった、家に伝わる書物に記載があった、賢者化野は善性を持った青年であったが道を誤ったと…」
私は驚いた千年間人々を苦しめて来た魔神が、賢者であり善性を持っていたと信じられない。
「賢者達は力を合わせ理想郷を築いた、だが過ぎた文明は人々から生きる力を奪い、死が遠い物になり生まれる子が少なくなったの、賢者達は解決方法で二つに別れた」
「二つの方法?」
「文明を捨てず人間を改良する事で問題を解決する派閥と自然回帰派閥、アダシノは自然回帰に傾倒し過激な手段を取ったの、機械人形軍団による文明の破壊…」
「しかし、初めてあった時マヒトは子供の姿だった」
初めてマヒトとあった時の事を思い出す、名前以外何も過去の事が解らない可哀想な子供だった。
幸い子供の居なかったマヒトの母が面倒を見てくれたが、そうでなければ行き倒れになって居るところだ。
「信じられないと思うが、古代の文明ではその者体がの一部、肉片一つ有れば全く同じ人間を複製出来たんだ、マヒトはアダシノの複製可能性が高い、記憶が受け継がれなかったのだろう」
「記憶がないとは言えマヒトは善良だった…」
「言っただろう?アダシノは善良な賢者だったと私の先祖はそんな友を止められなかった事を悔んで書物を遺した……記憶を無くしたことで本来の善性を取り戻したのだろう」
私は昔からマヒトは自分よりも人を優先させるところがあった、それを指摘するとマヒトは母の言葉を守っていると、自分には過去もなく生きては居てはいけない人間だと考えてしまう時がある。
「人を助ける為に生きなさい…そうすればそんな事は考えなくなるって、母さんが言ったんだ」
マヒトは無意識に自分が魔神で有ることを自覚し、自分が生きていてはいけないと思っていたんだ。
「どうする…魔神としてマヒトを倒すか?」
マーシャの問に私は首を横にふる。
「勇者を出し抜きマヒトを救う」
「大夫良くなったようだな…」
私はベットで本を読むアリシアに声を掛ける。
目に精気が宿り、美しい銀髪には艶が戻っている。
「いつこの部屋から出してくれるの?」
「2日後、私の同士が作った村に連れて行く、そこで暮らして気に入らければ、あとは好きにすると良い」
「教団ではなくて?」
アリシアが不思議そうに尋ねる。
「君は秘匿された聖女だ、教団に戻っても幸せにはなれないだろう」
幸せか、幸せの何たるかも知らない男がよく言う。
「マヒトはお父様の何なの?」
どうせ部屋の外を見たらバレるのだ、いい機会だ。
「同士だった…」
「だった?」
私は輝いていた千年前を思い出す、伊能先生をリーダーに各分野の天才が集められた、酒々井魔理沙、古田勇士、アレックス、マリアン、ピエールそして化野真人の七人は素晴らしいチームだった。
「御父上をリーダーに千年前七人の天才が集められた、それは知っているかい?」
「ええ、その賢人達の力で、病や災害、貧困、飢餓…人間の脅威になるものをほぼ全て克服出来たと聞いております」
「新たな問題が出てね、余りに快適な環境故、生命の危機を感じず子孫を残す気が薄れてしまったんだ、当時は少子高齢化と大問題になったよ」
「それでお父様は私達をデザインしたのですね、魅力的な容姿、異性を発情させる力とより優れた子孫を残せる母体として聖女を創造した、並の人間にはできない偉業です!」
アリシアは我が事のように先生のしたことを偉業だと言った、そのように育てられたからな、これから私の言うことは納得出来ないだろう。
「私は反対だった、そんな事をしないで徐々に自然に回帰すべきと進言したんだ…」
「魔神アダシノの様な考えなのですか?」
アリシアが睨みつけてきた、自分の存在を否定されたのだから…
「ああ……アダシノそのものだ…」
「どういう……?」
「私はマヒト・アダシノ……魔神、化野真人のクローンの様なものだよ」
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