第54話:ある日の日常
今日は休日で学校も休みだ。なので部屋でだらだらと過ごすことにする。せっかくの休みなんだから、こういう日があってもいいよね。
そうだ。どうせならまだクリアしてないゲームでも進めるか。
もうストーリーも後半に入っているし、続きが気になってたんだよな。今日一日を使ってクリアしてしまおう。
ゲームを起動させてしばらくプレイしていると、後ろから晴子が話しかけてきた。
「春日ー」
「なんだ」
「暇だよぉ」
「そうかい」
…………
「かーすーがー」
「なんだよ」
「ひーまー」
「それがどうした」
「少しはかまえよー」
何なんだよこいつは。しょうもないことで呼びやがって。子供かっての。
「かーすーがー!」
「ああもう。今いいところなんだから後にしてくれよ」
「1人で遊んでないでこっちもかまえよー」
「だから後にしろっての。つーかいちいち蹴るんじゃね-よ」
「むぅ~」
背中を足で小突かれながらも無視してゲームを進める。というかいちいちかまってられん。
今は攻略に専念しよう。今日中にクリアしたいからな。
「春日ー」
「…………」
「おーい」
「…………」
無視だ無視。放っといたらそのうち飽きるはずだしな。
「そこまで無視することないじゃんかよぉ……」
「後にしろ。これ終わったら相手してやるから」
「…………」
晴子には困ったもんだ。俺だって1人で楽しみたい時間が欲しいってのに、毎回かまってられないっての。
「ん~」
何やら晴子が唸っているが気にせず集中。どうせロクでもないこと考えているんだろう。
ま、これクリアしたら相手してやることにしよう。
「かまってくれないんだったら……あのこと美雪に話しちゃおっかな~?」
「あのこと……?」
嫌な予感がして思わず手が止まってしまう。
振り向くと案の定ニヤニヤしていやがった。
「中学の頃さ、美雪の家に上がったことあるじゃん?」
「ああ、それがどうした?」
「そんで部屋の中まで入ってさ、美雪が飲み物とりに部屋から出ていった後に部屋中をジロジロ見回してたよな?」
「……だ、だからどうした?」
美雪の部屋にはあまり入ったことないしな。そりゃあちこち見たりするさ。
でもこの程度ならバレても痛くない。ちょっぴり不機嫌になるかもしれないけど……
「その時にさ、ベッドの下に下着が落ちてたのを偶然発見したんだよな。んで美雪が居ないのをいいことに、そ~っとその下着に手を伸ばして――」
「だああああああああああああああああ!! それ以上言うんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」
「くっくっくっ……」
ちくしょう!
俺の記憶を持ってるからって知られたくない過去を喋りやがって……!
なんかもうこいつには一生頭が上がらないような気がしてきた。常に弱みを握ってるようなもんだからな。
ちなみに今晴子が言ったことは未遂だ。
たしかにあの時に下着を発見して触ろうとしたけど、触れる直前で美雪が入ってきたからすぐに手を引っ込めたんだよな。そういうことだから実際には触れていない。
だからセーフだ。セーフなんだ!
でもさすがにこれを本人が知ったら怒るだろう。もしかしたら嫌われるかもしれない。それだけはカンベンだ。
「わかったわかった。相手してやるからバラすなよ?」
「やっとその気になったか」
俺の隣にやってきてから座る晴子。
「大丈夫だって。秘密にしといてやるから」
嬉しそうにしやがって。
くそぅ。なんか悔しい……
「んで、何するんだよ」
「これやろうぜ」
見せてきたのは格ゲーだった。以前にも対戦したことのあるやつだ。
「いやいや、忘れたのか? 俺らが対戦しても面白くなかっただろ。他のにしようぜ」
「いいからいいから。ほらやろうぜ」
「ったく、わかったよ。でもすぐに終わるからな」
「はいはい」
しょうがないやつだ。どうせ何回かやったら飽きるに決まってるだろうに。
まぁいい。とりあえず付きあってやるか。
バ、バカな……
「へへっ。またオレの勝ちだな」
「ぐっ……」
「これで10連勝かな?」
おかしい。勝てない。実力は完全に一緒のはずだ。
以前は勝ったり負けたりしていたのに、今回はなぜ負け越すんだ……?
何回やっても勝てない。
「も、もう一回だ!」
「いいぜ」
再び勝負を挑んでみるが――
「また負けた……」
「ふふん。春日は弱いなぁ~」
「くそぉ!」
やっぱり勝てない。動きが全て読まれているかのようだ。
どうしてこうなる? 何が悪いんだ?
前はここまで差がつかなったのにこれは一体……
あっ。まさか――
「お前さては1人で練習してやがったな!?」
「そうだけどそれが何か?」
「やっぱりか……」
こいつは学校に行ってないからな。だから暇になることが多い分、1人でやり込む時間も増えたってわけだ。道理で実力差がつくはずだよ。
俺も今度練習しておこう。なんか悔しいし……
「格ゲーはもういいから別のやろうぜ」
「んじゃこれにするか」
「おう」
次に選んだのは協力型のゲームだ。これなら実力差があっても問題ないしな。
その後も何時間か一緒にプレイし続け、気が付けば日が暮れようとしていた。
「さすがに疲れた。ここまで長時間やったのは久しぶりだしな」
「だな。オレもここまで付きあってくれるとは思わなかったよ」
「満足したか?」
「まぁな」
「そりゃよかった」
これでまだ足りないとか言いやがったらどうしようかと思った。でも満足したようだしもう大丈夫だろう。
「のど渇いたな。ちょっと飲み物取ってくるよ」
「それなら俺の分も頼む」
「あいよ」
晴子は部屋から出ていった後、数分後に戻ってきた。ペットボトルを2つ持ってきている。
「ほらよ」
「お、サンキュー」
差し出されたペットボトルを手に取ろうとするが――
「なんちゃって」
直前で引っ込められ、俺の手が空ぶった。
「……何のマネだ?」
「欲しけりゃここまで取りにこいよ!」
この野郎……嫌がらせしやがって。小学生みたいなことしやがる。
ペットボトルは頭上高くまで上げられてるし、あそこまで取ってみやがれってことか。ふざけやがって。
いいだろう。そっちがその気なら絶対奪ってやる。
「このっ……このっ……!」
「ほらほら。どうした?」
動きが読まれたかのように巧みに腕を動かしてかわしてやがる。器用なやつめ。
「さっさと……よこせっ……!」
「だったら自力で取ってみるこった」
この野郎……!
俺をからかって楽しんでやがるな。あざ笑いやがって。ほんといい性格してるなこいつ……
「ほ~れ、さっさと取らないとオレが全部飲んじゃうぞ~?」
「てめぇ……いい加減に――」
あ、やべっ。勢い付け過ぎた。
このままだとバランス崩して晴子の方に倒れ――
「う、うわぁ!」
「! きゃっ」
共に床に倒れ、晴子の体に覆いかぶさってしまう。
「いてて……あっ」
「……っ!」
なんてこった。これじゃあまるで押し倒したみたいじゃないか……!
さすがに本気になりすぎた。何やってんだ俺は。
「ご、ごめん。すぐ退くから……」
「う、うん……」
体を起こし離れてから座りなおすが……
「…………」
「…………」
き、気まずい。
なんだよこの雰囲気は……
「ほ、ほら。これ飲めよ」
「お、おう……」
ペットボトルを受け取って一口飲む。しかしあまりの気まずさにもう一回口に入れて、そのまますぐに飲み干してしまった。
その後も気まずい雰囲気のままで、一日中会話が少ない日になった。
………………
晴子の体……柔らかかったな……
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