第39話:寝込みイタズラ

 いつものように帰宅してから部屋に向かい、ドアを開ける。


「ただいまーっと」


 …………


 あれ? 誰も居ない? もしかして出掛けてるのか?

 と思ったが、返事が無かった理由がすぐに判明した。晴子はベッドの上で気持ち良さそうに寝ていたからだ。

 こいつめ。人の気も知らずにのん気に寝やがって……


 そうだ。丁度いい。この隙にイタズラでもしてやるか。ちょっとぐらいなら大丈夫だろう。いつもの仕返しだ。

 寝ている晴子の側まで近づき、すぐ横で座った。


 うーん。意外と寝顔も可愛いな。もし俺が女になったらこんな顔になるんだろうか。

 こいつは見た目だけは本当に美人だ。千葉達が魅了されるのも理解できる。でも中身は男――というか俺なんだよなぁ……

 …………少しぐらいなら触ってもいいよな?


 ぷにぷに


 そしてほほを突いてみる。

 おお。やわらかいな。俺のよりやわらかい。意外と触り心地もいい。女の子はみんなこんな感触なんだろうか。


 しっかし気持ち良さそうに寝てやがる。案外起きないもんだな。

 ふーむ……


 …………


 ふと、晴子の胸元に視線が移る。そこにはができていた。

 ……………………少しぐらいなら触っても……怒られないよな?

 元から晴子が触っていいと言ってたしな。きっと問題ないはず。うん。


 息を飲み、そこにそーっと手を伸ばす。

 そしてを優しく掴み、ひと揉み。


 もみもみ


 おお。やわらけぇ。ほっぺよりもやわらかいな。

 女の人はすごいな。こんなのを二つもぶら下げてるもんな。そりゃ歩くと揺れるってもんだ。まぁ揺れない人もいるけど。

 しかし本当にやわらかい。ここには男のロマンが詰まっているとかいう奴もいるが、案外間違ってないかもな。この感触ともみ心地はとりこになってしまいそうだ。


 ……あれ、おかしいな。

 以前に揉んだときよりも感触が少し違う気がする。気のせいか……?


 …………


 あ、わかった。

 前はブラを付けた状態で揉んだんだっけ。でも今はたぶんブラを付けていない。だから感触が違うんだ。


 つーかなんでノーブラなんだよ!?

 そういやノーブラも意外と快適とか言ってた気がする。だからその状態でつい寝てしまったんだろう。

 ということはブラもしていないから、これが生に近い感触なのか……


 しかし本当に揉み心地がいいな。そろそろ止めようかと思っていても手が止まらない。

 さすがにこれ以上続けてると起きるかもしれないし、止めるべきなんだろうけど……

 でもこんなチャンスはあまり無いし、今のうちにこの感触をもっと味わっておきたい。


 いやいや、バレたらさすがに怒られるかもしれない。だからそろそろ手を離さないと……


 だけど、もっと揉んでみたい……


 もうちょっとだけ……


 もうちょっとだけなら……


 あと数秒くらいなら――





「……いつまで揉んでるんだよ」

「――ッ!?」


 やべぇ……やりすぎた……

 すぐに手を離したが、さすがに手遅れだ。

 晴子はゆっくりと起き上がり、軽くアクビをしてからこっちを向いた。


「人が寝てるときに何してるんだよ」

「い、いや……その……なんというか……」


 やはり怒ってるよな……

 と思ったら突然ニヤリと意地悪そうな表情になった。


「で? どうだった?」

「へ?」

「だから。オレの胸を揉んだ感想だよ」

「なっ……」


 いきなり何を言い出すと思いきや……


「予想以上に柔らかかっただろ?」

「いや、まぁ、あの、なんというか――」

「だってお前は直に触ったことないじゃん」

「うっさい!」

「よかったな。オレのお陰で初めておっぱいの感触味わえたんだ。感謝しろよ?」


 この野郎。調子に乗りやがって!

 でもこいつの言う通りだから何も言い返せなくて悔しい……


「つーか結局触るのな。それならあの時に意地張らないで断らなけりゃよかったのに」

「ぐっ……」

「ったく。何してんだよお前は。オレってそんな性格だったと思うと情けなくなるぞ」


 散々である。

 やはり止めとけばよかった……


「ところでさ。結局何を隠してたんだよ」

「あー……」


 美雪が弁当を作ってきてくれる件についてだろう。

 だけど何で今さらそんなこと聞くんだ?


「つーか何で蒸し返すんだよ。もうそれはいいだろ」

「いやだってよー。気になるじゃん」

「頼むから忘れてくれよ。しつこいぞ」

「んー……それだったら~」


 そう言って少し考えるようなポーズをしたあと、いきなり笑顔を浮かべた。

 あっ。嫌な予感。


「言わないなら~…………」

「言わないなら?」

「オレの胸を揉んだことを美雪にバラしちゃおうっかな~?」

「んなっ!?」

「くっくっくっ……」


 ちくしょうめ。そうきたか……

 やはり晴子が揉んでいいって言ってきた時に断って正解だった。嫌な予感がしたんだよな。それも無駄になっちゃったけど。


 さすがにこれ以上黙っておくわけにはいかず、結局全て喋ることにした。


「んだよ。そんなことだったのかよ……」

「だから大したことじゃないって言っただろ」

「なら最初から隠すなよ」

「お前が無理に聞き出そうとするのが悪い」

「でも弁当か……」


 晴子は何かを考えているような表情になり、そのままベッドに寝転んだ。


「どうした?」

「……いや、なんでもない」


 何か気になることでもあったんだろうか。

 まぁいいや。もう済んだことだし。これ以上詮索するのは止めよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る