第35話:揺れるおっぱい

「んで結局告白もせずに帰ってきたと」

「…………」


 翌朝。

 晴子にデートについて色々と聞かれ、なぜか説教されていた。


「せっかくのデートしたのに、まるで進展してないじゃんか」

「い、いや。少しは進展したぞ」

「へぇ? どこまでいったんだ?」

「手を繋いだ!」

「…………はぁ」


 露骨にため息つかれた。

 ちくしょう。これでも結構勇気だしたつもりなんだぞ。


「なんでそこまでいって告白しなかったんだよ」

「しようとは思ってたんだよ」

「じゃあすればよかったじゃねーか。どうしてしなかったんだ?」

「それは……」


 告白しようとした瞬間、なぜか晴子のことが脳裏をよぎり告白することが出来なかった。

 あの時なんで躊躇ためらったんだろう。自分でもよく分からない。


「それは?」

「…………」

「春日?」

「な、なんでもない」

「……?」


 本当に何でだろうな。


「そういや中学の時も告白しようとしたことあったよな? でも結局できなかったじゃねーか。直前でヘタレやがってよぉ」


 くそぉ、さすが元俺。覚えてやがったか。


「ったく。情けねぇな」


 しかしあれだ。『自分』に説教されるのがこんなにも不愉快になるとは思わなかった。何故なら言われたくない正論をズバズバと指摘してくるからだ。

 というかよく他人事みたいに言えるな。晴子だって自分で体験した出来事だろうに。


「ま。でも――」


 晴子はニヤつきながら近づいてきた。


「春日はこんな奴だしなー。仕方ねーか」

「どういう意味だ?」

「べっつにー?」


 嬉しそうな態度がムカつく。なんでこんなに上機嫌なんだよ。


「そんなに落ち込むなよ。元気出せって」

「いや別に落ち込んでるわけじゃ――」

「あ、そうだ。なら一緒に散歩でもしようぜ。いい気分転換になるだろ」


 散歩って、また唐突だな。


「まぁ……いいけどさ」

「よし決まり。んじゃさっさと準備しろよ」

「はいはい」


 しょうがない。付き合ってやるか。外出の準備をすることにする。

 そんな中、ふと晴子が髪を結ってるところを眺めていた。髪を後ろで束ね、口にくわえていたヘアゴムで髪を留める。ポニーテールの完成だ。

 随分と手馴れたもんだ。男の頃は一度もやったことのない仕草なのにな。


「ん? どうしたんだ?」

「な、なんでもない」


 イカンな。不覚にも見入ってしまった。さっさと準備しないと。

 そして支度も終えて二人で家を出た。




「おっ。アレ食おうぜ」

「クレープか。悪くないな」


 散歩中にクレープ屋を発見し、一緒に食べる事にした。

 二人分買ってから近くのベンチに座った。ちなみに晴子の提案で、俺達は別々のクレープを注文した。これなら二種類味わえる。


「なかなか美味いぞこれ」

「だな。偶にはクレープもいいな」

「春日、そっちのくれよ」

「あいよ」


 持っているクレープを近づける。晴子はそれを大口を開いてパクリと食った。

 ……ってちょっと待て。いくらなんでも取りすぎだ!


「んなっ!? お、おい! そんなに取るんじゃねーよ!」

「いいじゃねーか。ケチケチすんなよ」


 クレープ自体そんなに大きなサイズではなかった為、三分の一近くが晴子に食べられてしまった。

 くそっ。こうなりゃ晴子の分も食ってやる。そう思い晴子の持ってるクレープを同じ様に大口開けて食べた。


「ちょ……取りすぎだぞ春日!」

「お前だってこのくらい取ったじゃねーか!」

「そんなに取ってない!」

「いーや取った!」

「取ってない!」

「取った!」


 お互いに睨み合う。

 こいつめ……食い意地張りやがって。まぁいい。元は取り返した。これでおあいこだ。


 食べ終わった後にまた歩き回ることにした。

 そんな時だ。前方におっぱいの大きい人を発見したのだ。

 すげぇな。歩く度に揺れている。あの大きさはF……いや、Gはあるかもしれない。

 別に巨乳派というわけではないが、揺れるおっぱいがあればつい見てしまう。仕方ないじゃん。男の子だもん。

 あのサイズはなかなかお目にかかれない。目に焼き付けておこう。

 そう思いしばらく目で追っていると――


 ギュッ!


「――いっっってぇぇぇ! 何でつねるんだよ晴子!?」

「…………さっさと行くぞ」

「おい!! 聞いてるのか!?」

「ふんっ……」


 この野郎、思いっきり抓りやがって……!

 まだヒリヒリする。俺が一体なにをしたってんだ。理不尽だ。


 その後も何度か聞いても結局答えてくれず、なぜか一日中不機嫌な晴子だった。

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