第24話:文化祭①
待ちに待った文化祭当日。晴子と一緒に学校に向かう事にした。
「そういやオレらのクラスって何やるんだ?」
もちろん晴子にはメイド喫茶について一切知らせていない。
「……見てからのお楽しみだよ」
「へぇ。期待させるじゃねーか」
「思い出に残るぐらいの出来だと思うぜ」
特に晴子にとっては一生忘れられない出来事になるだろう。
俺も楽しみで仕方ない。
「ほほう。気合入ってるんだな」
「まぁな」
あのやる気が無かったクラスが一致団結して取り組むぐらいだしな。それだけ意欲的になっている。
「あ、そうだ。人手が足りないから晴子にも手伝って欲しいんだけど、協力してくれないか?」
「ん? オレが? あまり役に立てないと思うけど」
「大丈夫だって。簡単だから」
「まぁ……別にいいけど……」
よしっ。言質とったぞ。
「それじゃあ頼んだぞ。詳しいことは学校に着いてから話すよ」
「わかった」
学校に到着し、先に来ていた美雪と合流した。
「美雪、
「うん……大丈夫」
これで後は晴子に着させるだけだ。
「んじゃ晴子は
「は? 今着てるだろ」
たしかに晴子は俺の制服を着ている。しかし俺が言った“制服”とはもちろん違う意味だ。
「いやそうじゃないんだ。とりあえず美雪に付いていけばわかるよ」
「意味わかんねーよ……」
「まぁすぐに分かるって。後は頼んだぞ美雪」
「……こっち」
「お、おい」
美雪に引っ張られ、晴子は更衣室へと入っていった。
いよいよこの時がやってきた――
メイド喫茶をやる教室で待機し、15分ほど経過したときだった。扉が開き、待望の人物が現れたのだ。
もちろんメイド服を着た晴子だ。美雪に後を押され、教室へと入った。
「お……おおおおお! 晴子ちゃんのメイド姿……!!!」
「かわいい……」
その姿を見たクラスメイト達は、まるでアイドルに会ったかのような歓声をあげている。晴子もすっかり人気者になったもんだ。
「な、なんでオレがこんなの着なきゃならねーんだよ!」
「似合ってるじゃないか晴子」
「うるせえ!!」
長い黒のドレスに純白なエプロンドレス、そして頭に白いフリルが付いたカチューシャ、完璧なメイド姿をしている。
髪は下ろしてロングストレートになっている。ポニテのままでも捨てがたいが……これはこれでいいな。
「似合ってるよ晴子ちゃん!」
「うん。素敵だよ!」
「み、見るんじゃねー! スマホで撮るなぁー!」
おお。こんなに恥ずかしそうにうろたえる晴子を見るのは新鮮だ。やはりメイド服を着せてよかった……!
「おい春日! これはどういうことだよ!?」
「ウチのクラスはメイド喫茶をやることになったんだよ。だから晴子にも手伝ってもらおうと思ってな」
「聞いてねーぞ!」
「アレー? ソウダッタカナー?」
「白白しいんだよ!」
「学校に来る途中で手伝うって言ってたじゃねーか」
「あの時は何やるか知らなかったんだよ!」
もっとも聞かれても教える気は無かったが。
「つーかなんでこの服はオレにピッタリなんだよ……」
「動きやすくてよかったじゃないか」
「………………あっ! まさか……あの時オレのサイズを測ったのは……」
ようやく気付いたか。アホめ。
「と、とにかくもう着替えるからな!」
そう言ってすぐに小走りで扉へと向かって行った。
だが甘い。
「ちなみに晴子の着てた服は美雪が回収してるからな」
それを聞いた晴子はピタリと足を止め、ゆっくりとこちらに振り向いた。
「……どういうことだよ」
「返してほしけりゃ手伝えってことだ」
「てめぇ……ハメやがったな!」
そう。これが俺が思いついた計画だ。
メイド服に着替えさせた後、脱いだ服を人質に取り、強制的に手伝わせようというシナリオだ。
これで晴子が帰るには、メイド姿で表に出歩かなければならない。さすがの晴子もそんな羞恥プレイは避けたいはずだ。
「真面目に接客すれば返してやるから。がんばれよ」
「ふざけんな! こういうのは美雪とかにやらせればいいじゃねーか!」
「あー実はな。それは美雪も着るはずだったんだよ」
「……何?」
本来ならば美雪もメイド服を着る予定だった。
しかし内気な美雪は接客には向いていない。そう思い、話を持ちかけたのだ。
「でも美雪は嫌そうにしてたんでな。だから俺の計画を手伝うことを条件に、免除されることになったんだよ」
「やけに協力的だと思ったら……そういうことだったのか……!」
正直言って、美雪のメイド姿も見たかった。超見たかった。
けれども今回は、可愛らしい服を着た晴子の姿を見たい気持ちが上回ったのだ。
「ま、諦めて仕事するんだな」
「ぐぬぬ……」
しばらく俺を睨んでいたが……諦めたかのようにガックリと肩を落とした。
「ちくしょお……なんでオレがこんな目に遭うんだよぉ……」
「もうすぐしたら客も入ってくるだろうし、準備しとけよー」
「ううぅ……」
いつもからかってくるお返しだ。
さぁ……お楽しみはこれからだ――
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