「来る」

「いやあ、久々の依頼人だね。ありがたいことだよ。ネットの情報でここを見つけてくれたのかな?よくない噂もあっただろうに、本当によく来てくれたよね。ところで、二人のどちらかに何か見えたんじゃないかな?君の眼なら見えたはずだよね?」

依頼人たちを見送った後に私の雇い主である生首、貝塚探偵が話しかけてきたので、サラリと書き込んだタブレットを見せた。

「ふむふむ……やっぱり、あっち側絡みだね。まあ、そうでもなければここにたどり着くことはできなかっただろうしね。ここまでは私の予想通りだとも。では、彼らの言っていた神社を調べてもらえるかな?この通りの身体、いや首だからタブレットとか使えないからね。」


「首だけになってからもこうしてやっていけるのは君という友人、そして優秀な助手が手伝ってくれているからだね。もちろん私は毎朝毎晩、君に感謝しているとも。本当だよ?首だけになってから口がますます達者になった私と、声を失ってしまったけれど頑丈な身体の君との組み合わせ。こういうと気を悪くするかもしれないけれど、我々二人が揃っているのは幸いと言えるんじゃないかな?聞いてるかい?」

どうせいつもの戯言だろうと話半分に聞きながら調べて、判明した神社が表示されたタブレットを首の前に出す。

「ありがとう。社の前の写真はあるかい?これは……お稲荷さんだね。それなら狐のお面を用意してくれるかい?確か離れにあったはずだよ。それをつけてお参りに行こうじゃないか。私がつけるわけないだろう?つけるのは君だよ、筥崎くん」

どうせそこまで連れて行くのも僕の仕事だ、と貝塚は言うのだろう。小さい頃の彼女と遊んでいた神社ほどの山奥にあるわけではなさそうだけど、坂道や階段はそれなりにありそうだ。まったく、当時のイタズラのせいで今でも一緒に居ることになるとはね。

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