第6話 男は冒険者になれません

「セリス……今日は森に行くよ」

「ダメですっ!」


 昨日の夜、俺は女神からスキルをもらった。


 そして、7年後に俺は魔王と戦う運命にある。


 今からモンスターを倒して、レベルを上げないとヤバい。


 だから今日、モンスターのいる森へ行こうとしているのだが。


「男がモンスターと戦うなんて……希少種のアルバート様に何かあったら……私、死んでしまいます」

「そうですわ。ご主人様に何かあったら、生きて行けません……」


 猛反対するセリスとリンフィア。


 この世界の常識から言えば、二人が反対するのは当然だ。


「実は昨日……」


 俺は二人に、昨日のことを話した。


「え……っ! 男なのにスキルを授かるなんて……」

「本当ならすごいことですよ! ご主人様っ!」


 二人は当然、すごく驚く。


 この世界の男は、普通スキルを授からないからだ。


「7年後に魔王と戦うことになるらしいからさ……今から森でモンスターと戦おうと思って」

「そうですね……今から少しでも経験値を貯めておいたほうがいいかもしれません」

「戦うご主人様もステキです♡」


 よかった。


 二人は納得してくれたようだ。


「でも、アルバード様お一人で森へ行くのは不安です。私もお供します」

「あたしも一緒に行きますっ! アルくんの奴隷だもんっ!」


 二人がついてきてくれたら、実際、すごく助かる。


 俺は森へ行くのは初めてだし、何が起こるかわからない。


 パーティーメンバーは多いほうが安全だしな。


「ありがとう……よしっ! 森へ行こうっ!」


 ★


 マクタロード公爵領の東——


 黒き森、ブラック・フォレストがある。


 名前は怖そうだが、強いモンスターは出ないらしい。


「あ、スライムがいますっ!」


 茂みからスライムが出てきた。


 青いプルプルの、Fランクモンスターだ。


 ……さて、どうやって戦うか?


 俺は貴族だから、冒険者みたいに、戦いの訓練を受けていない。


 冒険者——危険な迷宮に潜り、モンスターを討伐して金を稼ぐ者たち。

 

 この世界では、冒険者はみんな女だ。


「ふう……こんなところにいましたか……」


 背後から声が。


「アルバート様が冒険者の真似事など……あり得ません」


 アルウィンさんだ……っ!


 聖剣エクスカリバーを手にして。


 眉が上がっている……


 かなり怒っている、みたいだ。


「究極奥義、光極剣——っ!」


 激しい光を放つ、エクスカリバー。


「はああああああああああああああっ!!」


 スライムを、一刀両断……っ!


「すらああああああああっ!」


 スライムは一瞬で、消滅。


「剣聖の究極奥義をスライムに使うなんて……オーバーキルすぎます」


 セリスが呆れた表情で言うが、


「セリスさん……私たちメイドは、アルバート様を守る【剣】です。眼前の敵を全力で叩き潰すのは、メイドの使命です」

「アルウィンさんは全力すぎますって……」

「ところで、セリスさん。アルバート様を森へ連れ出すとはどういうことで——」


 アルウィンさんが言いかけた、その時。


 ずどおおおおおおおおおおおんんっ!!


 耳をつんざくような地響き。


「おがぁぁぁぁあああ!」


 オーガが、地面から出現っ!


「お、オーガ⁈ Cランクモンスターですっ! どうしてこの森に……」

 

 リンフィアが、俺の手を掴む。


「セリス、アルバート様の側にいて。私がオーガを倒します」


 アルウィンさんが前に出る。


 剣聖のアルウィンさんがなら、オーガは倒せそうだが……


 俺のスキルを試してみる、チャンスかも。

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