第4話 幼馴染の王女は奴隷になりたい「アルバート様の奴隷にしてくれないと死にますっ!」

「おはようございます! 今日は女神祭ですね」


 朝、セリスが起こしてくれた。


「おはよう。セリス。そっか。もう女神祭か……」

「アルバート様のお誕生日でもありますねっ! 10歳おめでとうございます♡」

「うっ……!」


 セリスにぎゅうと、抱きしめられる。


 大きな胸に顔が埋められて。


「今日は奴隷を選ぶ儀式があります。下に奴隷候補たちが来てますから、すぐ来てください」

「うん……」

「……? どうされました?」

「セリス……ぼく、奴隷は要らないよ」

「そんな! 奴隷を選ぶのは【希少種】の義務ですよ」

「奴隷なんていなくても、困らないし……」


 中身が日本人の俺は、やっぱり人間を奴隷にするのは抵抗がある。


「アルバート様……」


 セリスは俺の頬を優しく撫でる。


「お考えはわかりました。でも、女にとって【希少種】の奴隷になるのは、最高の名誉です。アルバート様が拒否すれば、彼女たちの名誉を汚してしまうことになります……」

「そうなんだ……」

「彼女たちは自分で望んで、アルバート様の奴隷になることを選んだのです。だから彼女たちの気持ちに、応えてあげてくださいっ!」


 俺が拒否することで、奴隷候補たちを逆に傷つけることになるのか……


 奴隷を選んでも、奴隷として扱わないならいい。


 ちゃんと人間として扱えば、きっと大丈夫だ。


「わかった。奴隷、ひとり選ぼうかな」

「いい子ですね。とってもえらいです♡」

「ぶはっ……!」


 再びセリスの胸に埋められて——


 ★


 下のホールに、奴隷候補たちが並んでいる。


 上の階から、俺は彼女たちを見下ろして。


「アルバート様、奴隷候補たちは100人います」


 メイド長のアルウィンさんが、俺のところへやって来た。


 黒いおさげ髪に、メガネ。


 真面目なメイドさんだ。


 この人もセリスと同じく、胸が大きくて。


「アルバート様の好きな子を選んでください」


 人間の女の子だけじゃなくて、エルフに獣人にドワーフもいる……


 いきなり選べと言われても、誰にすべきか。


「アルバート様!」


 下から聞き覚えのある声がする——


「リンフィア……っ!」


 リンフィア・フォン・クラスフォード。


 王国の第三王女だ。


 そして、俺の幼馴染でもある。


「どうしてここに?」

「もちろん、アルバート様の奴隷になりたくて……っ」


 リンフィアの首には、奴隷候補の証——銀の鈴がついた首輪が。


「いや、でも……リンフィアを、奴隷にするのんて」

「どうしてもアルバート様の奴隷なりたくて。アルバード様の奴隷なるのがずっと夢でした……っ」

「リンフィアは王女だろ。国王陛下が許すわけ……」

「いえ、お父様は二つ返事でお許しくださいました! 【立派な奴隷になってきなさい】と、送り出してくれたんですっ!」


 さすがに幼馴染で、昔から友達だった女の子を奴隷にするのは抵抗が——


「やっぱりキミを奴隷にするのは……」

「アルバート様の奴隷になれないなら——」


 リンフィアはナイフを首に突きつけて、


「あたし、死にます——」

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