閑話 彼女達の死亡理由

そう言えば先輩っていつ死んだんですか?


「みっちゃんの訃報を聞いた数時間後かな。」


 ……はっやいですね!?早くないですか!?まさか……自殺……!?


「してないしてない。正直みっちゃんいない世界つまらないからそうしようかとも悩んだけど……いやそれがよくなかったかな、色々頭の中で考えすぎてボーッとして歩いていたらいつの間にか階段で、足を踏み外してね。駅の階段から真っ逆さま。」


 うおお、これはまた痛い死に方ですねぇ……。


「ああうん、落ちてる時あらゆるところ打ってて痛かったけど、首か後ろ頭部分かな?そこ強かに打った後は全く何も覚えてなくて、気付けばみっちゃんの隣にいたわ。」


 あ、打ちどころ悪くて即死してますねそれ。


「ええ……?そこまでいくのにあらゆるところ打ってて痛かったのに、即死扱いなの?」


 多分?落ち切っても痛みで苦しむ人いますし、何なら打ちどころ悪くて半身不随とかになる確率のが高そうですよ、先輩の死に方。


「ああー……そう言われたらそうだね……即死って痛い思いしないで死ぬから即死なのでは?って思ってたけど、そういう考え方もあるのか……だとしたらラッキーな……車とかトラックに撥ねられて死にましたってよりはましかなぁ。事故死だったら両親が憤死しかねなかったし。」


 え、相手にですか?


「いやいや、そんな愁傷な気持ちなんか持ちやしないよ。そうだね……損害賠償金を残して死にやがって、とかの意味で憤慨するよあの人達。ああでも、信号無視の過失事故だったら逆に金取れたのにとか思ってそう……ん?じゃあ今ひょっとして一文もならない死に方しているから両親めっちゃキレてるんじゃね?うっわ気になる超見てみたい。」


 他人の両親について悪様に言うのも何ですけど、クソですね先輩の親って。いやもう死んでるから過去形か、クソでしたね先輩の両親。


「そうだねぇ、好きな人が別にいたのに無理に別れさせられて、愛のないお見合い結婚からの妊娠出産ってやつだったから仕方ないんじゃないかな。跡取りを期待されたけど生まれてきたのは女、何の一銭にもなりゃしない。しかも一週間何も食わなくても死なない頑健な身体の持ち主ときたら、世間体考えて育てないといけないって思ってただろうね。でもその子育てから解放されて良かったと思うよ。」


 ……何だかこれ言うのもアレですけど、先輩、早死にして良かったですね。


「はは、確かに。成人したらしたで育ててやったんだからって金搾取されてたかもしれんね。そういうでみっちゃんこそどうしてこんな早くに……?だってお見舞い行った日元気だったよね。もうすぐ退院って言ってたくらいだったのに。」


 そうですねぇ、本当、先輩と話ししていた時は調子良かったんですが……夜急に息苦しくなったと思ったら身体がいうこと聞かなくなりまして、周りうるさくなったなって思ったら耳がどんどん遠くなって感覚も無くなっていって……って感じで、気付けば此処にいました。


「死ぬ時、苦しい思いはあんましなかった?」


 そうですね、苦しいのは一瞬だけで、後はなんかどんどん全ての感覚が遠くなる感じだったので……苦しんで死ぬってことはなかったです。


「そっか、よかった。」


 よかった?


「みっちゃん投薬治療で色々苦しいって言ってた時期あったじゃん。正直ゲームやるのもしんどいって言ってたのもあったから。だから、死ぬ時まで苦しかったら嫌だなって勝手に思っただけ。」


 先輩は、私に死んでほしくなかったとも思ってません?


「そりゃ当たり前だよ。何ならみっちゃんが退院したらゲーム実況一緒にやろうかって誘おうと思ってたくらいだし。」


 それは初耳でした、ちょっと勿体無いですね。


「私も勿体無いかなって思ったけど、ゲームやる以上に面白いことを今やっているからいいかなって思うよ。」


 そう、ですか。


「みっちゃんが楽しくないならちょっと悲しいけどね。」


 楽しくない訳じゃないですけど。


「うん?」


 なんていうか、私はいいんですけど、先輩が死んだ後の方が楽しそうな理由がわかってちょっと安心したっていうか……納得したっていうか……生きている時は楽しいって思えなかったことに寂しさを覚えましたというか……


「あっはは、複雑な感情だ。生きていた頃楽しかったことは、みっちゃんと馬鹿みたいにゲームと漫画の話をしていた時に決まってるじゃん。あ、ここってゲームないからそれができないことは残念に思っているかなぁ。」


 でも、この世界は私達の見たゲームやアニメの世界がありますね。


「そうそう、だから結局のところ、私の思っている楽しいことは死んでも続いているんだよ。」


 そうですか。そうなら……よかった。


「みっちゃんはどうなの?」


 私ですか?……そんなの決まっているじゃないですか。


「副作用がわからない投薬治療で延命させられながら、いつ死ぬもわからない明日に怯えることがない今の方が、何倍も楽しいですよ。」

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驕れるチート、永からず 柴犬美紅 @48Kusamoti

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