距離を置こう

大智のお説教(助言とも言う)のお陰で、やっと颯太に連絡する気になれた私は、携帯と睨めっこしている最中だ。


あの後バイトを終えて家に帰った彩は、

「いま何してる?電話したい」

そう颯太にメッセージを入れていた。

だけどなかなか付かない既読に一度携帯を置いてお風呂へと向かった。お風呂から上がり返信を確認するも、未読のままのメッセージに少し苛立ちを覚える。

そして今、日付を超えても既読にならないメッセージ画面を睨みつけているところだ。


人がせっかく仲直りしようと勇気を出したと言うのに、一体何をしているのだ!

まあ、どうせレッスン室に篭って携帯を見ていないのは明らかだけど……

もうこのまま寝てしまおうかと迷った末に、思い切って電話をかけてみる。

もういいや、私から謝って明日は会いに行こう。そう思っていると電話が繋がる。


「もしもし颯太?」

『彩……何?』


颯太の声が聞こえると一瞬にして固まる彩。

何故なら電話越しに聞こえてきたのは、居酒屋のような騒がしい音と、颯太を呼ぶ可愛らしい声だったから。


予想外のことに声のトーンも強張る。

「え…今どこにいるの?」

『外だけど……なに、練習するなって言っておいて今度はちょっと酒飲むのも気に入らないわけ?』


は.........なによそれ..........


お酒が入っているせいか、口調もいつもより怖い颯太に少し怖気付く。

呆気に取られて何も言えずにいると電話越しに溜め息をつかれるのが分かって、次に何を言われるのか怖くなった。


『彩、俺たち.............距離を置こう』

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