第3話坂道発進

この上り坂の信号停車の後方には、BMWが停車している。

失敗は許されない。

真美は呑気に寝ている。

神田は、サイドブレーキを引いて停車している。

額から脂汗が。

横断歩道の信号が点滅し始めた。間もなく、信号が変わる。

青になった。

神田は、サイドブレーキを倒すと同時に半クラッチで1速に入れて、アクセルをゆっくり踏んだ。

自動車は一瞬後方に下がったが坂道発進出来た。

神田はやったー!と、叫んでいた。

すると、真美は目を覚まして、どうしたの?と、言っていたので、神田は喜々として、坂道発進出来た話しをした。

「トシ君。君はペーパードライバーじゃないよね?」

「まっさか〜、こうやって運転してるじゃいか?」

「運転は誰だって出来るよ!」

「君はAT限定じゃないか」

「……」


自動車は踏み切りに進入した。

一時停止して、走り出すと。

踏み切りの入り口でエンストしてしまった。

「いっけね」 

「もう、運転が下手なんだから」

すると、踏み切りがカンカンカンカンと鳴り出した。

神田は焦った。

だから、クラッチが上手く離せずエンストを繰り返す。

遮断器が降り始めた。

「ち、ちょっとトシ君」

「分かってる」

神田は必死だ!

前方の遮断器が降り始めた頃に、ようやく踏み切りを脱出した。

「危なかった」

「もう、ジェットコースターより、トシ君の助手席の方が怖いよ!」

2人を乗せた車は、ようやく宿に到着した。

帰りは渋滞に巻き込まれ、二度と神田はМT車に乗ろうとは思わなかったし、真美は運転させなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ドライバー3 羽弦トリス @September-0919

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ