第14話 イグドール教団
――ペロペロペロペロペロペロ。
僕はライラの時と同じ塩梅でアルティーナを飲み込んだ。飲み込む対象の違いで実験結果がどう違うかという検証を兼ねているのだ。
「ああ……あっ!うっふ……あうう……んっ!」
僕の口内でやはりビクンビクンと快感に包まれもんどりを打つアルティーナが感じ取れる。この娘は本当に感度が良いな。本当に気持ちよさそうで僕の方が羨ましくなってきた。
「――よし、そろそろいいだろう」
ズロォ……。
恍惚とした表情のアルティーナが吐き出されると、すかさず所長が解析を始める。
「んんー?これはさっきのライラ君の時とちょっと違って洗脳の割合が低いですねえー。ひょひょ……これはつまりヌメタローさん、あなたは『のみこむ』のスキルに関係なくこのお姉さんに好かれているということです!」
と、ギャバット所長は評価した。
「へーそうなんだアル、なんか嬉しいよ」
僕は直球でアルにそう伝えた。
「このヌルヌルが癖になりますぅー。ヌメタローさん最高です!」
彼女はそう言って僕の首元に抱きついてくる。
「しかし不思議ですねぇ~……」
所長は首を傾げた。
「何がですか?」
「あなたの体が元々邪神イグのものだとするなら、ここまで人を癒やすようなスキルがあるのは不自然というか……もっと破壊や退廃をもたらすスキルなら分かるのですがね」
まあ確かにそういえばそうかも。
「まあそこは僕の人柄が関係しているんじゃないかな?僕は平和主義だからね!」
「かも知れませんねえ~……」
と、ここで今まで珍しく大人しかったバダガリ君が所長に突っかかった。
「おい、それ、コイツが単にエロスケベなだけじゃねーのか?」
「ええ!?バダガリ君そりゃあヒドい!僕も男だし女性が好きなのは当然だろう?所長もなんとか言ってやって!」
「いやー私も
僕らがこんなやり取りをしているとライラが思い出したように口を割ってきた。
「ネールさんのことは聞かないの?師匠?」
あ!そうだそうだ。
「ねえ所長。ネールって人知らない?僕の人間だった時のことを知ってる人みたいなんだけど」
所長は少しうつむいた後、難しい顔をして顔を上げた。
「私もイグドールのネール君は以前から知っているよ。正義感の強い女性だった……。しかし誰か男性と懇意であったという話は全く聞いたことがないねえ~うん」
「そもそもイグドール教団ってのはどういう団体なんだい?所長。なんか最近になって急に真逆の事を始めたとか――色々謎なんだけど」
「うーん、ちょっとここでイグドール教団について説明しておきましょうか?」
「是非!」
ギャバッドさんはフーっと一息つくと目を見開いて大きな声で説明を始めた。
「まず、昔からこの地の人々は邪神『イグ』に苦しめられてきたのです。数年に一回思い出したようこのロッコロール王国にやってきては町や村を破壊していったのです」
「なるほど、まさに邪神だね」
「そこで人々は多くの魔術師や剣士を集めこれを討伐しようとしました。しかしいざ戦いが始まると相手にならないくらいイグの力は強力で、集まった方々は皆蹴散らされ二度と戦えないほどの絶望を植え付けられてしまいました」
「やっぱやべーヤツじゃねーかよ!お前」
などとからかってくるバダガリ君。いや、今の僕はそんなんじゃないからね?見ての通りさ!
ここで所長は目をさらに見開き背筋を伸ばす!
「しかぁーし!人類も黙ってはいません。力で正面から対抗しては勝てないと分かったので今度は別の方向から勝機を見出そうとします!」
「別の方向?」
「はい、それは『転生魔法』です!」
転生?何か怪しげな魔法だね。
「転生魔法とはその名の通り人と人の魂を入れ替える魔法!人々は実験を繰り返し、人と人だけに留まらず人や動物といった異種生物間でもその魂を入れ替える事に成功したのです!!――もっとも百人を超える魔術師達と丸一年という魔力の貯蓄期間が必要にはなりますが。この魔法の特色は相手の強さや能力に関わらず魂の入れ替えが出来る。つまり邪神イグ相手にも通用するという事です!すぅ~ばらしいぃぃ~魔法ですよねぇ~!はっはは~!!」
その場で回転しながら頭のおかしい狂人のような動きを見せて熱弁するギャバット所長だった。
……でもこれが事実なら今のところいい感じに話が進んでいるように聞こえるけど……。ここからどうなったんだろう?
所長は続けて説明を始める。
「そしてイグの魂を誰かと入れ替えるわけですが……ここで問題が起こりました!誰がその役をやるのか――ということです!!」
「……!?」
僕はハッとした。ひとたび
僕は所長に真剣な眼差しを向ける。
「所長、もしかして、イグを巡って仲間割れ――とか?」
「ビンゴだねえヌメタローさん!!始めは邪神イグと魂を交換するのは人格者のネールさんと決めていたらしいんだがね。人間は欲深いものです……。イグの身体を乗っ取るのは俺だ!私だ!と内部で抗争が起きてしまったようでねぇ……そこからは皆さんが持っているイメージ通り、私欲のために邪神イグを追い求める邪教となってしまいました……」
先程のハイなテンションから一転し、少し寂しげな顔でうつむく所長だった。
「所長詳しいですね」
ライラが尋ねた。
「ええ、私も初期の頃からイグドールにいましたからね」
あ、なるほど。僕は納得した。しかし教団の方針転換の事はまだ謎のままだ。
「で、ヌメタローさん。聞きたいのはそんな邪神教のイグドールがなぜ急に方針を変えたのか?ですね?正直私もよく分からないのです」
「分からない?」
「はい、教団内部での争いの結果、誰の魂をイグの体に入れるかという問題は結局のところ当時のイグドール教主であった『ヴァイオ』という男に決定してしまい、そのまま転生の儀の当日を迎えます」
「ねえ、そのヴァイオって教主はやっぱり邪悪な人だったの?」
「ええ、イグの力を悪用しようとしていましたからね、……しかし私やネールさんも含め穏健派は弾圧されていて表立って反対する事が出来なかった。そこで策を練りました」
僕らは皆ギャバッドさんの話に集中していた。
「それは転生魔法の魔法陣に手を加え、ヴァイオではなくやはりネールさんにイグの肉体に入ってもらう――というものでした!」
ほほう。それで上手く行けばいい感じに平和になりそうだけど……。
「我々穏健派はネールさんと口裏を合わせ、転生魔法に特殊な詠唱を加えてるようにして準備を整え、そしてイグを発見し山中にて転生魔法を使った……そこまでは良かったのですが、イグから魂を引き出すその間際、突如ヤツが暴れ出したのです!!さすがは邪神とでも言うべきか……転生魔法に逆らうとは相当な生命力です」
「そ、それでもあなた達は無事だったんですね?」
実際目の前にギャバッドさんが生きているのだから当たり前っちゃ当たり前だが。
「ええ、しかしヴァイオ含め殆どの魔術師はそのときのイグの攻撃で倒されてしまい、それ以降何が起きたのか知る者はいません!私も気を失っていました……なのであの場で何が起きたのかという事は~……誰にも分からないのですっ!!」
さっきまで静かなテンションからまた興奮状態に戻ってきたギャバッドさんに珍しくアルが質問した。
「あ、あの、でもネールさんはヌメタローさんの正体を知っているんでしょう?じゃあネールさんはその時の事、全部知ってるんじゃないですかぁ……?」
自信なさげに中途半端に手を挙げて聞くアルティーナだが、僕もその通りだと思った。
「まあそう思うだろうね~しかし
ギャバッドさんのその言葉に全員が絶句した。な、なんだか話がややこしくなって来たぞ……。
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