第3話 残り香③

”実験?一体何の?"

マリーゴールドの男性の言葉を聞き、徹の頭の中に?がいくつも浮かぶ。


”そもそも、国は植物に関する実験を倫理的、宗教的に良しとしていない。

だから、僕も仕方がなく、素直に従ってきた。じゃあ、奴らは…”


「なあ、実験ってなんだ?頼む、冥途の土産に教えてくれよ。」

「知りたいですか?いいでしょう。私もちょうど

    最近の研究の成果を誰かに聞いてほしかったところです。」

そして、彼は意気揚々と語り始めた。

「まず最初に、あなたたちは神の子をご存じですね?

ですが、その名前と場所はおおやけには隠されている。なぜでしょう?」


徹は答える

「神の子を利用しようとする悪人から守るためか?」


「おそらくそうでしょう。私も探すのに苦労しましたよ、ホント。」


そう言い終わると、男性は神の子の名前を暗唱しだした。


・悠久な影ーサクラ 

・活性の希望ーアブラナ  

・太陽からの破片ーヒマワリ

・虎が雨ーアジサイ・調和の移ろいーモミジ

・荘厳なる移ろいーイチョウ

・聖夜からの祝福ーポインセチア

・一途な願いーシラカンバ


 圧倒的余裕を脳でかみしめながら話を続ける。


「以前から疑問だったんですよ、神の子である植物と薬や食料として使う植物。

この2つの違いにね。そこで、私は植物が自由に扱える場所を探したんですよ。」

「しかし、国の人の頭が固いこと、固いこと。実に、面白くなかった。

そんな時、あるお方が私を組織にを誘ってくれた。そのおかげで、私は神の子の力の一端を手に入れたんですよ。それが、このマリーゴールドってわけです。」


ウルガーは絶句した。

”神の子の力を手に入れた?そんなバカな話、あってたまるか。

第一、管理者の一族が管理をしているんじゃなかったのかよ…”。


頭で受け止めきれない事実に混乱しながらも、あることに気づく。

「じゃあ、そのリコルちゃんの青バラって…。」


「もちろん、彼女も神の子の力の一端を持ったものです。

しかも、私たちの研究の完成形の一つともいえる子ですよ…。」


しばらく流れる、静寂。

男性は話したことに満足したのか、満面の悪魔の笑みだ。

「では、この子は返していただきますね。」

2輪の黄色のマリーゴールドに縛られたリコルが男性に抱きかかえられる。


話を聞いていたウルガーがぐったりするのを横目に

徹はこの話を聞き、イライラしてきた。

もちろん聞きたいことはほかにもあるが、それはそれである。


”僕だって知ってみたいぜ、神の子の秘密。だけどよ、これはないだろ。”

”ないないない、同じ植物を探求する者ってだけで虫唾が走る!”

”それにリコルちゃんを適正個体って、ふざけんなよ!

研究者、いや、人として、間違っている!”


一発ぶん殴ろう、そう思い、もがいてみるがやはり出れない。


「クソ、見てることしかできねーのかよ!」


「大丈夫ですよ、君たちはそのまま体をへし折られて、天国へ行くのですから。

そんなに怒っても、もう何もできませんよ。」


男は徹の近くまで寄ってきて、最後の冷酷な言葉を突き付けた。


それでも、あきらめようとはしなかった。

もがいて、もがいて、もがいてみた。


男は笑い、侮蔑の表情でこちらを見る。


”せめて、リコルちゃんだけでもどこかに逃がせれたら”

そう思い、男に抱きかかえられた弱ったリコルに手を伸ばす。


手がほんの一瞬、わずかに触れた、神秘的な片目の青バラに。


次の瞬間、青バラからアクアマリンの発光が放たれる。


徹達を縛っていた黄色のマリーゴールドが瞬く間に白く変わり、散っていった。


「なに!?まさかこれは、異能が開化したのか?」

先ほどまでの余裕が一瞬で吹き飛び、焦りの表情に変わる男性。


急いで新たなマリーゴールドを出そうとするが、手の甲から出る花の色はすべて白色で、先ほどのように命令をが聞かない。


「クソ、なんでこんな時に異能が…。」


”今がチャンス!”徹は思うや否や男の前に飛び出す。


ドゴォ! 


先程まで溜め込んでいた怒りを拳に入れ込み、顔に一発。

男は倒れこみ、こちらを睨む。

「調子乗るなよ!このガキが!」

立ち上がり、懐から短剣を取り出す。

血気迫った表情で徹に走り寄ってきた。


”やべ、武器持ってたのかよこいつ!”

”せっかく転生したのに、これで終了とか、冗談きついぞ!”

武器に対抗する手段を持ってない徹は死を覚悟した。



リコルはせっかく自分を助けてくれようとした人たちが殺されようとしている現状を見て、心からなにか湧き出てくる感情があった。


”絶対に殺させない。自分のせいで、巻き込んだせいで、殺されるのはイヤ!”


その思いに応えるかのように、リコルの手の甲から1つの青バラが生まれる。

宝石のような、深い青に色ずく、神秘的なバラ。


急いで手の甲から取り、男に向かって力いっぱいに投げた。

男に青バラが当たる。すると、青バラは男を取り囲むかのようにとてつもないスピードで急成長し、茎や葉を生やす。

先ほどの徹たち同様、すぐさま男は身動きが取れなくなった。



























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