3
囲炉裏のそばに座した三人。
タガネは里を訪ねるまでの経緯を説明した。
王国の南で悪名を響かせる盗賊団が、王都の金庫を襲撃して
その結果として、王国が報奨金を出すと明言して、仕事に当たる者を募った。そういった仕事には専ら傭兵が
しかし、数に制限を設けていなかったのもあって、大量の受注が出てしまう。
本来は盗賊団の居所の調査だったのが、盗賊団の首を獲った者の勝ち、つまり競争へと様相が変わったのである。
南へと多くの傭兵が三々五々と散った。
タガネは噂の元を探っていく内に、この田舎里へと辿り着いた。
タガネが説明を終える。
その間、姉弟はとても
「どうした」
タガネは低い声で訊ねる。
すると、一転して姉の少女は暗い顔になって目もとを伏せた。目には火に照らされて浮かび上がる憂いの陰りが宿っている。
少女は微かに笑みを浮かべた。
「ここに盗賊団はいないよ」
「どうして」
「だって、この町を守る傭兵団がいるから」
タガネはわずかに目を
膝の上に乗せた剣の鞘に頬杖を突いて、少女を下から覗き込む。
「傭兵団?」
少女は頷いた。
「つい半月前から、ここを守る傭兵が来たの」
「半月?」
「
タガネは訝しげに眉根を寄せる。
少女はその様子に、仕方ないとため息を吐きながら説明した。
この田舎の里の近辺で略奪は起きていた。
犯人は、南を恐怖させていた盗賊団。殺戮などをした痕跡として、死体の顔をすべて剥ぎ取って去るとの風聞だった。
まだ遠くに盗賊団の名前を聞いていた頃と違って、ついに怯えた里の長老たちが警護の依頼を出した。それに応じたのが、いま里を守る傭兵団である。
傭兵団が滞在してから、近辺で略奪は行われるものの、この里を侵攻しようとはしなかった。喜んだ長老が彼らへ衣食住を提供する代わりに、継続的な警衛を頼んだ。
傭兵団はこれを承諾し、現在も里の近辺に這い寄る盗賊を退けている。
タガネは説明を聞いてうん、と唸る。
少女が小首を傾げた。
「どうしたの?」
「いや、別に」
タガネは面前で手を振ってから床に寝そべる。静かに弟の方を一瞥した。弟は会話にも入らず、ただ鍬を手放さずにタガネを睨む。
その険悪な姿勢を咎めて、少女が弟の肩を
タガネは起き上がるや、わずかに口角を上げた。
「どうやら、俺の仕事場ではなさそうだな」
「そうね」
少女が穏やかに笑う。
「でも、こんな所まで来たんだし、今日は休んで行きなよ」
「ああ、助かる」
タガネは頭を下げて礼を言った。
そして弟の方へと振り向く。
「よろしくな」
「……」
タガネの声に、弟は答えなかった。
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