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タガネが家の中に入る。
濡れた荷物を戸口に置くなり、少女に気取られないよう室内を見回した。
「あまり広くないけど」
「いえ、宿を貸して頂けるだけありがたい」
少女が走って行く。少しして着替えと体を拭く物を持って帰って来る。タガネは礼を言って受け取り、身仕舞いを整える。
タガネは髪を拭いてから、服を脱ぐ。
少女は慌てて背を向けた。
「それにしても」
少女は探るように呟く。
「子供で旅って大変でしょ」
「いや、そうでも」
「でも私と年は同じくらいみたいだし、やっぱり凄いよ」
感嘆する少女に、タガネは着替えを終えた。剣は戸に立てかけて、荷物の中身を取り出していく。やはり、どれも濡れてた。
荷物を点検するタガネは、不意に囲炉裏のそばで寝ていた子供が身動ぎをしているのに気づく。
少女はタガネから濡れた服を引き取って、一つずつ室内に張った物干し台にかけていく。
「旅って、どこを目指して?」
少女の質問にタガネは振り返る。
「ここに」
「ここに?」
「盗賊が出ると聞いて」
タガネの言葉に、少女が身を固くする。ついで戸の外を覗き、辺りに誰もいないことを確認してから胸を撫で下ろした。
その挙動に、タガネは納得する。
明らかに警戒する素振り、それもタガネにではなく、他人に聞き咎められるのをひどく恐れた様子だった。
少女の顔は安堵していたが、同時に蒼白くなっていた。
やがてタガネを恐るおそる見る。
「どうして、それを?」
タガネは床に座って、濡れた靴の水分を払いながら顔を上げる。先刻よりも鋭く、相手を探る眼差しだった。
剣を軽く小突いて示す。
「旅の
タガネの灰色の瞳が弟を見やる。
囲炉裏の火に当たって眠っていたはずの弟が、上体を起こしてタガネを睨んでいた。壁に立てかけていた鍬を手繰り寄せようとしている。
タガネは小さく嘆息した。
「ここには依頼で来た」
剣を片手にして立ち上がる。
「俺は傭兵だ」
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