第52話 雨降り心のかくれんぼ1
「かくれんぼ?かくれんぼって、あのかくれんぼか?」
「そんな嫌そうな顔しないでよ」
「だって俺ら一六だぞ?」
「四歳でも一六歳でも変わらないよ。童心を忘れずに」
「仕方ねえなあ。一回だけな」
ちなみに時刻は二三時過ぎ。
鬼ごっこじゃないので近所迷惑にはならない筈だが、何もこんな時間からしなくてもいいのにと思う。
「
聞いた限りでは非常に単純明快なルールで、この家のどこかに隠れている雫紅を探し出せばいいとのことだった。
なお、一度決めた場所からは死んでも動かないなどと大言壮語を吐かれて舐められたので、即刻見つけ出してその自信を打ち砕き、泣き顔を拝んでやるつもりだ。
「準備が出来たならトイレで一○○秒数えてから開始って事で」
「分かった」
「私が命懸けで隠れるんだから、颯希も命懸けで探してよ?呼びかけなんかじゃ出てこないから、ちゃんと瞳で見つけてね?」
「むしろあっさり見つけて一泡服せてやるから覚悟しとけよ?」
俺は
ついでに用も足して時間を有効活用しながら、雫紅がどこに隠れたのか予想しているとあっという間に一○○秒が過ぎ去った。
戦いの
かくれんぼなんて子供の遊びだと鼻で笑っていたが、いざ始めてみるとこの年になってもテンションが上がる。
雫紅は俺のことを舐めていたようだが、これでも昔は近所の子供達と公園でかくれんぼをしてよく遊んでいたのだ。しかも隠れた友達を見つけるのが異常に得意で、「お前とかくれんぼしてもすぐ見つかるからつまんない」と言われ落ち込んだ悲しい経験もある。
隠れている相手を見つけられなかったことなんて、俺の記憶が正しければたったの二度だった筈だ。
俺にかくれんぼ勝負で挑んだのが間違いだったな!
とは言え、このだだっ広い家の中で体の小さな雫紅を探し出すのはかなりの難題で、俺は足早にそれぞれの部屋を探していく。どこにいるかな~と廊下を左に進み、最初に向かった先はつい五分前まで居た和室だ。
俺はベランダを除けば最南端の部屋から攻めていくことにした。
「いつの間になおしたんだよ…」
先程まで俺達が座っていた座布団がご丁寧に消え、元のさっぱりした部屋に戻っている。
手際の良さが怖い。
違いはそこくらいか……、いや、もう一カ所違いがあるな。
さっきはカーテンなんて閉じていなかった筈!
シャッと勢いを付けて開けるも、そこには
隠れている間に無防備なパソコンの中身を覗いてやりたい!
次!
ベランダは隠れられる場所がないため雫紅はいないだろうと予測し、二カ所目は部屋が最も大きなリビングを探すことにする。
……ぱっと見た限りでは見つからないな。そんな分かりやすい場所には隠れてないか。
となると隠れられそうな場所を考えて一つずつ潰していくしかない。
椅子やテーブルの下には居ないことが見えているので、俺はまずテレビの裏側へと向かう。隠れやすいポイントとして定評のある場所だ。
ゆっくり近づいていきヌッと首を出す。
いない。
ソファがずれてるって感じもなさそうだしなあ。
次!
三カ所目はキッチンだ。
食器乾燥機からボチョ、ボチョと音がする。夕飯の食器から垂れる水滴の音だろう。
キッチンに隠れているのだとしたら正直危ない気がしなくもないが、自信満々な雫紅の様子を見る限り何処に隠れていても不思議じゃない。
ここで隠れられるとすれば調味料を保存している戸棚の中だろうか?
「体中がソース臭満載になってたりしてな」
俺はシンクの下の空けられるスペースに雫紅が隠れていないか確認して────。
居るわけ無いか。
次!
四カ所目。
廊下を左に曲がり今度は風呂場へ向かう、っとその前に脱衣所があったな。
俺が風呂に入ったときには置かれていなかった洗濯カゴがあって、その中には雫紅のブラウスが綺麗に畳まれて入っていた。流石に
「ん~、部分的にコンパクトじゃないけど、背は低いしいけるか……?」
いやでも怠慢は良くない。それで足元を救われては元も子もないのだ。
自分自身にそう言い聞かせ一番上に置かれていたブラウスをどけ────。
レースの黒いブラジャーが入っていた。
ごめんなさい!調子に乗りました‼
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