第49話 メイド服の持ち主
「とにかく黒じゃ無くても何色でも良いから、
「え、私の限定……?」
「他に誰の物もないから俺は雫紅のメイド服を着せられたんだろ⁉何であるのか知らんけどさ!」
「あ、それ母親のだよ?」
え…………。
うん、確かに雫紅の所有物にしては俺でも身長が合う方だと思っていたけど………。
え…………?
「私の物じゃきついかなって思ったから母親のを置いておいたんだけど、私のが良いなら私のメイド服持ってくるからちょっと待っててね」
「いやいやいやいや雫紅が待て」
「なーに?」
「なんでメイド服限定なんだよ。普通の服無いの?ズボンでも、スカートでも文句言わないから」
そもそも二人分のメイド服があるという事象がおかしい。
二人してメイドのバイトでもしたことがあるのだろうか?
「ありゃ、
「雫紅‼」
クスクスと肩を震わせて笑う彼女に対して、ご近所さんから騒音被害を提出されかねない声量の絶叫をする。
マジで勘弁して欲しい。
「とりあえず言いたいことは分かったから、焦らずにもうちょっとだけ母親のメイド服を堪能しててよ。すぐに探してくるからさ」
「フリじゃ無いから本気で頼むぞ?俺着せ替え人形じゃ無いからな?」
「はーい」
それからソファでメイド服を堪能すること数分。
彼女は白のオーバーサイズTシャツと黒のスラックスを両手に引っ提げ、リビングへと戻ってきた。
「颯希は男の子だし、私は女子の中でもかなり小さい方だから服は大きめの方が良いでしょ?私より母親の方が背が高いから探してはみたんだけど、生憎とここに置いてある分が奇抜な衣装ばかりで流石に着せられる物が無かったんだ。だから私の持ってる服の中から、颯希でも着れそうな物を
俺は雫紅がまともな服を用意してきてくれたことにひとまず安堵を覚えると、受け取ったそれらを持って再び脱衣所へ
ちなみに世界一要らない情報だが、下着だけは雫紅や彼女の母親の所有物とおぼしき物は着用していないので安心して欲しい。俺が風呂に入っている間にコンビニ辺りで買ってきてくれていたのか最初から準備されていたのかは分からないが、風呂上がりに用意されていた物を着用している。決して変態的行為に手を染めてはいないと誓おう。
足がスースーする感覚を脱ぎ去り、渡された服に着替えてみると、思いのほかゆったりとした服の組み合わせであったためそこまでの苦しさは感じない。
ほんの僅かばかりヘソの辺りが見えてしまうこととする。
「大丈夫そうだわ」
「よかった~」
彼女は胸に手をあて、一安心と言った様子でホッと息を吐く。
「じゃあ私もお風呂に行ってこようかな。言っとくけど覗いちゃダメだからね?」
「なに、フリ?ラッキースケベでもかまそうか?」
「バカ」
そう言って雫紅は廊下の向こうに消えていき、リビングには俺一人だけが取り残される。
脱衣所のドアが閉まっているためか生活音が全く聞こえない。
静まりかえった部屋の中でスマホを
雫紅が風呂から上がってくるまでの間なら大丈夫だよな。
俺は適当な理由を付けて目を閉じ、襲い来る睡魔に身を委ねる。
彼女の服から香る甘い柔軟剤の匂いに包まれて、夢見心地のまま俺はソファで
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