第41話 刺し込む言葉
「また随分不釣り合いな子を連れてきたよね」
「
「別にいいんじゃない?メインディッシュにはパセリくらいがよく映えるし」
「誰が引き立て役だよ」
俺は洋食で言うところのパセリらしい。雫紅に比べて見劣りするのはどうにもならないが極めて心外だ。
「それはそうとどうなの?」
「なにが」
「狙ってないの?」
「んなわけあるか」
「狙ってみればいいのに」
「馬鹿言うな」
「だってあんだけ人の意見は聞かない、ボッチを極める、みたいな宣言してたお兄ちゃんが女友達連れて来てるんだよ?付属品は居るけど」
「人の信条を
正しくは他人の領域に深く立ち入らない、だ。昔一度だけ伝えたことのあるこれが、まさかそんな風に
いや、妹のことだし悪意ある改変の可能性もあるか。
「私はこう見えてもお兄ちゃんが掲げるルールは好きなんだよね。人間ってすぐ自分の枠に誰かを当てはめて、誰彼構わず縛ろうとするじゃない?犯罪者が多い地域に住んでたから悪人になったんだろうとか、あなたはこんな容姿だからこんな性格だろうとか。そういうのって本当にくだらない。だから人の意見に左右されることがないお兄ちゃんの考え方には好感が持てたんだよ」
「へえ、それは初耳だ」
「そんなぼっち
「無かったとは言わないけど、
「ふーん」
意味ありげな間を置いて俺のことをジロジロ見てくる。
「なんだよ、言いたいことがあるなら言えよ」
「んー、その前に開きっぱなしの扉だけ閉めてあげる。せめてもの情けとしてね」
「なんだそりゃ」
消えかけの灯火みたいに弱々しく入り込んでいた一階を照らす電光。それが閉まる扉によって蝕まれ、妹の顔が殆ど見えなくなっていく。
「私は詳しく知らないから加減なんて出来ないし、触れたくない過去にも触れちゃうと思うの。それでも良い?」
「変に気遣いをされるよりかはマシ」
「なら遠慮無く。お兄ちゃんは遠い昔の初恋を引きずって、雫紅ちゃんに重ねてるの?」
「………」
それはあまりにも直球であまりにも鋭利な言葉。俺にとっては銃で撃たれて抉れた箇所にナイフをブスリと突き立てるようなえげつない行為だった。自動車で例えるなら時速一二〇キロで人を引いてしまいそうな場面において、ブレーキを掛けるどころか速度を上げる行為に等しい。
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