第31話 嗜好レストラン2
「やっぱり先にこちらからお願いしてもいいですか?盗み見されると恥ずかしいので」
俺の手首を一方的に持ち上げて雫紅が申し出る。
「見られて恥ずかしいのは俺も同じなんだけど。そもそもなんで見る前提で話が進んでるんだ」
「
「俺ってそんな信用無いの⁉」
女子は体重を気にしがちなイメージがあるけども、そんなに聞かれて恥ずかしい情報だろうか?
「体がぽっちゃりしてて体重を気にしてるってんならともかく、雫紅はそんなことないだろ」
「とにかく先にやってよ。私ちょっと長引くかもだからさ」
「ちなみに言っておきますけど確認のため私が項目を読み上げるので同じことですよ?」
「え、声に出して読み上げられるの……」
「問題ないです。
「おい」
場所を入れ替わりボールペンを手に取ると、『
彼女は必要な個所の記入に漏れが無いかを見ると、確認と称して俺が書いた内容を読み上げ始めた。
「五月五日生まれ、
恥ずかしい。新手の羞恥プレイかよ。
返事をするのも
「ありがとうございました。では右側で少々お待ちください。女性の方が終わり次第この後の説明を致しますので」
「分かりました」
さあ雫紅、お前も同じ恥ずかしさを味わえ‼
「それでは引き続き女性の方もお願いします」
「あ、私ちょっと言っておかないといけないことがあって、嗜好タイプの項目についてなんですけど」
「どうされました?」
何の話だろうと耳をすませたが彼女は内緒話をする要領で声量を落とし、店員さんに顔を近づけ話しているので全く聞こえない。何か出したりしないかと期待しながら彼女の手元を注視していると、嗜好調査証らしきものが現れる。それに指を指しながら何かを説明する雫紅。うんうんと頷く泡音さん。
だめだ、よく分からない。諦めた俺が出来ることと言えば、泡音さんを綺麗な女性だと評することくらいだった。
一分半が経ち、まだかかるようならスマホで時間を潰そうか迷っていると、こそこそ話す雫紅の声が一回り大きくなった。
「
「やだ超怖い。でもあの野獣はとっても弱そう」
誰が野獣だよ!
「はい恐らく。品定めはするも弱すぎて、襲う勇気はない軟弱な獣だと思います」
「それはヘチョイわね。さすがは焦らされる恋なんて、ドMみたいな嗜好タイプをしているだけあるわ」
「俺をネタにして盛り上がるなよ!」
「まるで自分が話題性に事欠かないスーパースターであるかのような言い回しですよ。どう思います?」
「雫紅ちゃん、ああいうのは優しく見守って成長を促すのが私達保護者の役目でしょう」
「あんたらいつから俺の保護者になったんだ!」
それに下の名前で呼び合うとか、たった一分の会話で何が起こったんだよ。
「てかそっちの確認書は!」
「それならもう終わっていますよ。実は雫紅ちゃんから
「おい!」
「えへへ」
えへへじゃねえよ。何余計な事を吹き込んでくれてんだ。
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