第30話 嗜好レストラン1
「あらあらこの時間に三人組のお客様なんて珍しい。どうゆうご関係ですか?」
「どういう関係に見えます?」
「そうですねえ、お似合いのお二人と異物が一つですかね」
「今日も客として来てるんですから、それなりの対応してくださいよ」
「じゃあそれなりの対応をするわね」
「ひでえなあ」
「知り合いですか?」
妙に仲が良さげに見えたので店員さんに思わず聞いてみる。
「ええ、開店初日に彼女さんと来てくれたんですよ」
「さっき言っただろ、魚介類のグラタンが最高だったって」
言ってたけどこの場所とは聞いてない!
「彼女さんってもしかして
「あれ、なんで知ってるんですか……」
いつもは俺達がこいつに
「誰その人」
「婿折
「誰その人」
「こりゃだめだ」
雫紅がお手上げの合図を見せる。
「ともかく人数は三人で良いかしら。案内のために連れてきたのなら二人に変更するけど」
「いや、俺も混ぜて欲しいんですけど二人と一人でお願いします。それと
ゴニョゴニョと二人で話し出す。俺達はどうしたら良いのか分からないので二人のやりとりの行く末を見守るしかない。
「ええー、面倒くさいなあ」
「そこをなんとか」
「分かったから、じゃあこれが一〇一号室の鍵ね。君は前回確認してるからもう入って良いわよ」
「あざす」
しっかりお辞儀をして挨拶しているところを見るに、仲が良いとはいえ礼儀は
泡音さんと呼ばれた彼女がカウンター内のボタンを押すと、バリケードが上がって通れるようになった。そして尾棘の姿が奥へ消えていくとすぐさま下がっていく。
かなり厳重だ。
「いやー、面倒くさいのが居なくなりましたね。でも良かったんじゃないですか?これで心置きなく密室デートできますよ?」
「何の話ですか⁉」
「あら、ご存じなかったですか?」
教えて貰ったんじゃ無いの?とでも言いたげな不思議そうな表情で、首を傾げてこちらを見てくる。
ただこちらとしても初耳なので、そんな顔をされてもどうにもならない。
「なにも知らないんです。教えていただけますか?」
「そうだったんですか。失礼いたしました。それではこの
それから五分強、泡音さんから受けた説明を要約するとこういうことらしい。
この嗜好レストランなる店は外部生が完全使用不可で、俺達が学校に渡された嗜好調査証から得た嗜好タイプに合わせ、日替わりで料理を作ってくれる。必要となる情報は生年月日、氏名、身長、体重、嗜好タイプの五項目。実際に料理を作る上で必要なのは嗜好タイプのみだが、この学校の生徒であることを確認するためそのほかの情報も必要とするようだ。身長や体重まで答えなければいけないのは、同姓同名の人が間違われることのないよう徹底したためとのことだった。いちいち口頭で言うのは手間が掛かるので、嗜好調査証を直接手渡ししたらどうかと気づく人も居ると思う。しかし嗜好調査証にはより細分化された項目まで載っており、店員に見られたくない人も居るだろうと配慮した結果、『嗜好レストラン入場確認書』なるものを提出後、口頭確認をする方式になったのだと説明を受けた。
またその他にもこの店の売りにしているポイントは、どんな料理でも三五〇円とお手頃価格であることを教えて貰った。
「でもそうやって羞恥心を乗り越えた人には極上のプライベート空間が待っているので楽しめると思いますよ。では先程説明いたしました通りとなりますので、女性の方から記入をお願いします」
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