第27話 成功のねぎらい

 一週間後。展示会は大成功を収めた。


 盛りあがりすぎて学校外にまで声が響き、近隣住民から何度かクレームが入ったらしい。

 大盛況だったのは大変良かったが唯一問題となったのは、雫紅しずくの写真を家宝にしようと企んで持ち帰ろうとするやからがいたこと。しかも多数いたせいで止めきれず、写真が破れたり無くなったりと何度も何度も被害が起きた。その度にコピー機に直行して印刷してを繰り返したせいで、総使用金額がとんでもないことになっている。

 

 しかしまあお祭り騒ぎの後は静けさに包まれるもの。俺達は居残って後片付けの真っ最中だ。


「学校の総意くらいでないと個人写真の展示会なんて渋って開催できないだろ?あの演説はそのための布石、わざと学校中を巻き込むように仕向けたんだ」

「絶対だったろ」

 

 そこまで考えてあれを行ったとは到底思えない。

 聴衆をなびかせる演説は話者に大きなパワーがいる。胡散臭うさんくささがあったり本気度が伝わってこなければマイナスになりかねない。そう言う意味であらかじめ設定していたプランを元に行うと、上手くいかないことが多々ある。


「私の写真展って言いつつ一枚だけ颯希さつきとの写真混じってなかった?」

「そうだよ、俺もそれ言おうと思ってたんだ。お前が消したって言うから信じてたのにだましやがって!」

「結局誰かに取られて失くなってたんだから良いだろ?今頃その人の心の支えになってる頃さ」

「無理だろ」

「だろうな。俺達全員の月涙つきなみさんを奪った苫依とまより許すまじってビリビリに破かれてるか、五寸釘打たれてるかのどっちかだと思うぜ」

「誰の私かは自分で決めさせてくれない⁉」


 そう、尾棘はあろうことか俺を脅してきた時のあの写真を入れてやがったのだ。約束が違うってのもあるし、雫紅しずくは写ってるけど俺という不純物も写っているので、組み込むのはどうなのかと言うのもある。

 粗方の写真を撮り終えた雫紅が尾棘おとげに問う。


「でも私を尾行して撮影するって話はこれで終わりって事だよね?展示会のためならもう終わったし───」

「何言ってるんですか!これからもビシバシ取っていくので、是非シャッターチャンスを多めにお願いします」

「ねえねえ颯希、助けて」

「諦めろ。俺の手には負えない」


 ほんっとコイツの何処どこが不自由なんだか。苦笑いを禁じ得ない俺だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る